上 下
166 / 292
予期せぬ出来事

14

しおりを挟む




 「相変わらず、酷いめしだな。」

 「ま、それでも、ないよりはましだ。」

 「文句言ってる割りには全部食べてるじゃないか。」

 「いやだけど、仕方ないじゃないか。
 食べなきゃ、身体がもたねぇ。」

 家畜のえさのような食事を済ませ、狭い部屋でキーファ達は、各々、固いベッドに身を委ねていた。



 「あれ?今日はやけに早いな。」

 廊下に響く足音に、ウォルトは素早く身を起こした。



 「皆、食器を…急げ!」

マウリッツとキーファも飛び起き、トレイに食器を載せた。
そのトレイを、扉の下の小さな小窓から差し出そうとした時、足音はぴたりと止まった。



 「皆、扉から離れろ!」

 意外にも、扉の上の方ののぞき窓が開き、看守の厳しい声が響いた。
 何があったのだろうかと不審に感じながらも、三人は言われた通りに、奥のベッドの所まで退いた。
それを確認すると、かちゃかちゃと鍵のはずれる音がして、体格の良い男が背中を突き飛ばされ、部屋の中に倒れ込んだ。
 男は、酔っているのか、倒れたまま少しも動かない。



 「新入りだ。」

それだけ言うと、看守はさっさとその場から立ち去った。



 「気の毒に…こいつも俺達と同じようにかどわかされたんだろうな。
おい…大丈夫なのか?」

 「……あぁ、大丈夫だ。」

 何事もなかったかのように起き上った男に、三人は目を大きく見開いた。


 「それにしても酷い所だな。
こんな狭い所に四人とは……
それに…このにおい……」

 男は、そう言って眉をひそめる。



 「仕方ないだろ。
ここじゃあ、毎日目一杯働かされて、しかも、風呂なんて入れてくれないんだから…」

 「何日かしたらこのにおいにも何とも感じなくなるぜ。」

 男は、ゆっくりと首を振る。



 「あいにくと、俺は綺麗好きでな…
こんな所、長くいるつもりはない。」

 「いるつもりはないって…ここから出られるとでもいうのか?」

 「……ところで、あんたら、キーファっていう男を知らないか?」

 「キーファ!?」

 三人は、男の発した意外な言葉に思わず顔を見合わせた。



 「知ってるのか?」

 「それなら…」
 「キーファにどんな用だ?
あんた、キーファの友達か何かなのか?」



 答えようとしたキーファの言葉を遮り、ウォルトが男に質問した。

 
しおりを挟む

処理中です...