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再会

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 「手筈は整ってるって…どういうことなの?」

 「おまえをみつけたら、トラニキアの頂上でセルギオス様の下さったのろしを上げる。
そしたら、リガスさんが来て結界を破ってくれるから…」

 「えっ!またあそこを通るの!?」

そう言ったダニエルの顔はひきつり、その身体は小刻みに震えていた。



 「確かに、そうだよな…
俺達はリガスさんに術をかけてもらってあの辛さだったけど、術がないとしたら……」

マウリッツとウォルトは、ダニエルをじっとみつめた。
 自分達よりもずっと体格の貧弱なダニエルが結界を通ることを恐れるのは当然のことだと考えた。



 「それに、あの結界を一人でなんて本当に破れるの?
 君達がハンターに捕まった時にアレクに聞いたんだけど、結界っていうのは片側からだけではだめで、内と外から同じような力加減で破らないと破れないとか…
なのに、どうしてそのリガスさんはそんなことが出来るの?」

 「忘れたのか、ディオ…
セルギオス様に仕えてる魔導師は、世界でも指折りの特別な魔導師だ。
 俺もリガスさんに会ったのは初めてだけど、王族に仕えるのはとにかくそんじょそこらの魔導師とはわけが違う。」

 「それと…
トラニキアの結界は、リンガーとロージック、質の違う結界が二重に張られております。
そのことが何か関係しているのではないかと思います。」

 「ってことは、逆に言えば、トラニキアの結界は却って破りやすいということなのか?」

 横から口をはさんだウォルトに、マウリッツは質問を重ねた。



 「破りやすいとは言いませんが、おそらくは片側からの力に意外と脆いのかもしれません。
あ、もちろん、相当魔力の強い者でないと、大きな綻びを作ることは難しいと思いますが…」

 「なるほどな……」

 「それに、綻びを作ったところで、それをくぐれば命を落とすほどのダメージを食らいます。
 現に、ディオニシスさまは瀕死の状態だったということですし、私達もリガス様の術で守られていてあれですから。」

 「……そうだよな。
あの時は落ち着いて相談する暇もなかったから、戻る時のことも深くは考えていなかった。
 結界をくぐって、ディオが死にかけたんじゃ困るよな。
リンガーには白き魔術師なんて者はいないんだし……」

 三人は、一様に頭を抱え黙り込んだ。
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