あれこれ短編集

ルカ(聖夜月ルカ)

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日記帳

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「あぁ、畜生!
やっぱり3番の馬にしとけば良かった!」

ランディは苛々とした口調でそう言うと、飲み干した空のグラスを乱暴にテーブルの上に置いた。



 「ギャンブルなんてそんなもんさ。
 昨日勝ったからって、今日も待つとは限らない。
いや、どっちかっていうと、勝った次の日は負けるように出来てやがるんだ。
 得することがあっても結局は損するんだから、金儲けの手段にはならないな。
ギャンブルなんてものは、小遣いの中から無理のない金を賭けて、ちょっとしたスリルを楽しめばそれで良いんだ。
 勝ち負けなんてたいしたことじゃないさ。」

カウンターの中でグラスを磨く太った店主が、穏やかな顔でランディに話しかけた。



 「俺はあんたとは違う!
 勝ち負けにこそ、大きな意味があるんだ!
 俺は勝つ!勝って勝って勝ちまくっていつか大金を掴むんだ!
おいっ!酒をもう一杯くれ!それと、何か食うものもな!」

 店主は苦笑いを浮かべて肩をすくめ、店の奥に引っ込んだ。




 (畜生……あの時、俺は3番と4番でさんざん迷ったのに、隣の奴が知ったような口ぶりで絶対に3番だなんて言うから、それが勘に障ってつい勢いで4番を買っちまった。
 俺だってどっちかっていえば3番の方だと思ってたのに……変な意地を張らずに素直に3番にしとけば今頃こんなことには…)

 持ち上げたグラスが空だったことに気付き、ランディはしかめっ面で舌を打つ。



 「あの……ここ、よろしいいですか?」

 突然かけられた声にランディが顔を上げると、そこには品の良い中年の男が立っていた。
 男は、片手には黒い皮張りの鞄を持ち、身なりもきちんとしており、着ているものも上質の生地で仕立てられた上等なものだということはランディにも一目でわかった。




 「え……別にここじゃなくても、他にもあいてる席はあるぜ。」

 「あなたはギャンブルがお好きなようなので、少しお話がしてみたくて…」

ぶっきらぼうに答えたランディに少しもひるむことなく、男はにこやかに話しかける。



 「……ってことは、あんたもギャンブルが好きなのか?」

 「そういうわけではないのですが……」

おかしな奴だから係わり合いになりたくないと感じたランディの想いとは裏腹に、男はすでにランディの向かい側の席に腰を降ろしていた。



 「あの…もし、よろしければ、私にお酒を一杯おごっていただけませんか?」

 見た目の上品さとは違い、厚かましいことを言い出す男を、ランディは呆れたような顔でみつめた。



 (なんだ、こいつ…集りだったのか。
 身なりはしっかりしてても、実際は金がないってわけだな。
ってことは、こいつもやっぱりギャンブルが好きで、それで人生踏み外したとか…?)

そんなことを想像すると、ランディにはなんとなくその男が気の毒に感じられた。



 「今日は金がないから一杯だけだぞ。」

 「ありがとうございます。」

ちょうどそこへ料理と酒を持った店主が現れ、男はワインを一杯注文した。
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