あれこれ短編集

ルカ(聖夜月ルカ)

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十字架の楽園

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(ジョシュアの言った通りだった…)



私はふと、最初にジョシュアに会った日のことを思い出していた。
あの日、ジョシュアは私に言った。
「おまえは何も考えていない」って…

その時の私はその意味がよくわかっていなかった。
そんなことない。
私はなんでも自分で考えて行動してる!…そんな風に思っていた。
だけど、外の世界に出て来て、それがジョシュアの言った通りだったと気が付いた。
私は、あの高い塀と鉄条網で囲まれた屋敷の中にいる時は、何一つ考えてはいなかったのだ。
まさに、心を持たない人形のようなものだったのだということが、最近やっと少しずつわかり始めていた。

でも、自分で考える…何かについて考えるということは楽しいことではない。
考えて答えが出るのならそれでもまだ良い。
すぐに状況が変わるのなら…
だけど、人間の生活には考えても考えても答えが出ない事、良い方向に進まないことがたくさんある。
ジョシュアのことだってそう…
最近は、さらに状況は悪くなり始めていた。
気に入らない事があると、彼は私に暴力をふるう。
神父さんは、それはそれだけあなたに甘え、心を許してるからだとおっしゃった。
彼はそのうちきっと自分の過ちを理解するから、その時を待ちましょうとおっしゃった。
でも、私にはそんな毎日が辛くて仕方がなかった…







ある日、酔っ払って店に来たジョシュアと私はつまらないことからひどい言い争いになってしまった。
ジョシュアは、店の中だというのに私の頬を何度も叩いては足蹴にした。



「おいっ!やめろよ!」

数人のお客がジョシュアを止めに入ったけど、酔っ払ったジョシュアは誰の手にもなかなか止められない。
その時、一人の男性がジョシュアにつかみかかり、彼の元から私を引き離してくれた。
それは、最近、店に来るようになったリチャードという男だった。



「この野郎!なにしやがる…!」

ジョシュアは刺すような視線でリチャードを睨みつけた。
二人は取っ組み合い、まるで獣のように殴りあい、お互い、まっ赤な血に染まっていった。
このまま喧嘩が長引けばどちらかが死んでしまうんじゃないかと思った時、ジョシュアが倒れてうずくまり、リチャードは咄嗟に私の手を取って走り出した。



「リチャード、どこへ行くつもりなの?」

「いいから走るんだ!」

私達は夜の町をずっと走り続けた。
夜が少しずつ白み始めた頃、リチャードはやっと一軒の家の前で立ち止まった。 

 
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