あれこれ短編集

ルカ(聖夜月ルカ)

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雨宿り

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(あ…雨だわ…)



 突然に降り出した大粒の雨…
マーサはあたりを見渡し、一軒のカフェの軒下に駆け込んだ。
 雨宿りが出来そうな場所はそこしか見当たらなかったからだ。
 雨はどんどん激しさを増している。



 (あ~あ…やっぱり、傘を持って来るんだったわ…)



 今更、そんなことを考えてもどうなるものでもなかった。
この雨がやむまではここで足止めだとマーサは諦めた。



 (どうして、こんな日にこのお店はお休みなのかしら…
開いていれば、お茶でも飲みながら雨がやむのを待ってられるのに…)



 「あ!!すみません!!」

そんなマーサのもの思いをかき消すように、一人の若い男性がマーサの傍に駆け込んできた。



 (この人も傘を持ってこなかったのね…あ~あ、ずいぶん濡れちゃってるわ…大丈夫かしら?)




 「すごい雨ですね…」

 男性は、小さなハンカチで濡れた顔や髪をぬぐっているが、とてもそんなもので間に合うような濡れ方ではなかった。


 「大丈夫ですか?
あ…良かったら、これを使って下さい。」

マーサは自分の白いハンカチを差し出した。



 「え…でも…」

 「あんまり役に立たないかも知れませんけど…どうぞ。」

 「そうですか?助かります。
ありがとうございます!」

 青年は、にっこりと微笑み、ハンカチを受け取った。



 「あ……」

 青年が、ハンカチを見て、突然、言葉にならない声を発した。

 「どうかしましたか?!」

 「たいしたことじゃないんですけど…
僕と同じイニシャルだな…と、思って…」

 青年が見ていたのは、ハンカチに刺繍された「M」の文字だった。



 「M…だから…」

そう言いながら、青年はマーサの顔をじっと見つめる。



 (なに、この人…そんなに見つめられたら恥ずかしいじゃない!)



 「マーガレット!」

 「え?」

 「あなたの名前ですよ。
 違いましたか?」

 「違います!」

マーサはきっぱりとそう言って首を振る。



 「じゃあ…モリー!」

 「それも違います!」

 「それも違う?
じゃあ…メリッサ!」

 「また、はずれだわ。
 私は、マーサ。」

 「マーサ!
 次に言おうと思ってた名前だ!」

 「まぁ、調子良いわね!」

マーサは青年の言葉に苦笑する。



 「バレたか…
じゃあ、僕の名前はわかる?」

 「あなたの名前…?
そうね…マイケル?」

 「えっっ!!どうしてわかったの?」

 「本当に?本当にあなたマイケルなの?」

 「そうだよ!君のカンはすごいね!」

 「あなたよりはね…」

 二人は顔を見合わせて笑った。
 普段はどちらかと言うと人見知りな自分が、こんなに早く初対面の人物を打ち解けてしまったことにマーサは少なからず驚いていた。

 
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