赤い流れ星

ルカ(聖夜月ルカ)

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side ひかり

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「ほらほら…ちょっとでも良いから食べとけって。
冷めてもおいしいぞ。
……これから、母さん達と戦わなきゃならないんだから、栄養つけとかなきゃな!」

兄さんはいつもより明るい声でそう言うと、目の前の料理を口に運んだ。



「……そうだね。」

私は無理に笑って、同じように料理に口をつけた。
めったに食べられないあわびやひらめのお刺身……
本当だったら小躍りしたいくらいなんだけど、味もなにもわからない。
砂を噛むような…っていうのはきっとこういう時の表現なんだろう。
でも、食べなきゃ。
大変なのはこれからなんだから。
落ちこんでる場合じゃない!
そう思っても、やっぱりなかなか口には入っていかなかった。



兄さんにあれからのことを話して聞かせた。
とはいっても、肝心な所では兄さんも来てくれてたから、話すまでもなく理解してくれた。
あの電話の後、母さんに騙されたことを知った兄さんはすぐにハイヤーを呼んでこっちに向かってくれたらしい。
その間にも兄さんは店に電話をかけて、母さんと私が食事に行ったと聞かされ、それですぐに食堂街を探してみつけてくれたみたいだった。
もしかしたら、私の声が店の外に聞こえてたのかもしれない。
あんなに興奮したのは初めてだったから、自分で思ってる以上の声が出てたのかもしれないと思うと恥ずかしかったけど、そんなことを恥ずかしがっても今更どうにもならないからあえて考えないようにした。



顔もまた酷い状態になってたけど…それでも、私は午後のバイトには行く事にした。
せっかく、店長さんがお昼の休憩を長くしてくれたのにその上早退なんてしたら申し訳ないし。
兄さんは、私のバイトが終わるまでショッピングセンターで時間を潰して待っててくれた。
まさかとは思うけど、母さんがまた来るんじゃないかという心配があったから。
兄さんはすでに一度母さんに出し抜かれてるだけに、二度と失敗はしないという気構えのようだ。



そして、どうにかその日のバイトを終え、私は兄さんと一緒に家に戻った。
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