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ゴーグル(さそり座)
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(いたたた……
やっぱり、無理してたべなきゃ良かった。)
私はきりきりと痛む胃をさすりながら、少し前のことを後悔していた。
*
数日前からなんとなく体調が悪かった。
だから、今日は早めに帰って休もうと思ってた所へ、翼君からディナー食べ放題のお店が今日オープンするから行こうと誘われた。
「ごめんね…今日は体調が悪いから、早く休みたいの…」
普通ならそう言うのだろうけど、私は子供の頃から気が弱いというのか気にしすぎというのか…そういう損な性格に生まれついたらしく、断るということがものすごく苦手。
増してや、翼君とはつい最近付き合い始めたばかりで二度目のデートだし、彼は皆に羨ましがられるほどのイケメンで、私なんかにはもったいないような人だから、とてもじゃないけど断れない。
「わぁ、そうなの~?
楽しみ~!」
私は思いっきり弾んだ声でそう答えた。
翼君は痩せてる割にはかなりの大食漢で、次から次に料理を運んで来てはそれを私に勧めてくれる。
「カナ、もう食べないの?
これ、嫌いだった?」
「ううん、そんなことないよ。
今から食べようと思ってた所。」
「値段の割にはかなりおいしいよねぇ!
ね、飲み物取って来るけど、カナは何が良い?」
「えっと…じゃあ、翼君と同じので…」
本当は水で良かった。
でもそんなことは言えない。
だるくて考えるのも煩わしかった。
やがて、運ばれて来たのはコーヒーだった。
「これさぁ、インスタントじゃないんだよ。
煎れ立てなんだよ。
ほら、すごく香りが良いだろ?
料理だけじゃなくて、飲み物にも手を抜かないなんてたいしたもんだよね。
……あれ?飲まないの?」
「ごめんね…実は、私コーヒーって苦手なの…」
その想いは、当然、私の口から発せられることはなく…
「え…?あ…あぁ、私、ちょっと猫舌気味だから。」
「そうだったの?じゃ、ちゃんとぷーぷーして飲まなきゃね!」
私は曖昧に微笑み、コーヒーに口を付けた。
苦い…やっぱり、嫌いな味だ。
でも、きっと、青汁よりはマシだ。
ノニよりはずっとマシだ。
こんなのなんてことない。
あとちょっと…あとちょっと!!
私は、自分自身と闘いながら、なんとかコーヒーを飲み干した。
「カナ…一気飲みって…そんなにコーヒー好きだったの?
僕、全然知らなかったよ。
じゃあ、もう一杯もらってくるね!」
「そ…そうでなくて……」
翼君の後姿に思わず伸ばしかけた片手をそっと下ろす…
結局、私はいつもの倍近くの料理と大嫌いなコーヒーを五杯飲む羽目になったのだった…
それも、すべてが私のこの性格のせい。
こんな弱気な性格のせいなんだ!
やっぱり、無理してたべなきゃ良かった。)
私はきりきりと痛む胃をさすりながら、少し前のことを後悔していた。
*
数日前からなんとなく体調が悪かった。
だから、今日は早めに帰って休もうと思ってた所へ、翼君からディナー食べ放題のお店が今日オープンするから行こうと誘われた。
「ごめんね…今日は体調が悪いから、早く休みたいの…」
普通ならそう言うのだろうけど、私は子供の頃から気が弱いというのか気にしすぎというのか…そういう損な性格に生まれついたらしく、断るということがものすごく苦手。
増してや、翼君とはつい最近付き合い始めたばかりで二度目のデートだし、彼は皆に羨ましがられるほどのイケメンで、私なんかにはもったいないような人だから、とてもじゃないけど断れない。
「わぁ、そうなの~?
楽しみ~!」
私は思いっきり弾んだ声でそう答えた。
翼君は痩せてる割にはかなりの大食漢で、次から次に料理を運んで来てはそれを私に勧めてくれる。
「カナ、もう食べないの?
これ、嫌いだった?」
「ううん、そんなことないよ。
今から食べようと思ってた所。」
「値段の割にはかなりおいしいよねぇ!
ね、飲み物取って来るけど、カナは何が良い?」
「えっと…じゃあ、翼君と同じので…」
本当は水で良かった。
でもそんなことは言えない。
だるくて考えるのも煩わしかった。
やがて、運ばれて来たのはコーヒーだった。
「これさぁ、インスタントじゃないんだよ。
煎れ立てなんだよ。
ほら、すごく香りが良いだろ?
料理だけじゃなくて、飲み物にも手を抜かないなんてたいしたもんだよね。
……あれ?飲まないの?」
「ごめんね…実は、私コーヒーって苦手なの…」
その想いは、当然、私の口から発せられることはなく…
「え…?あ…あぁ、私、ちょっと猫舌気味だから。」
「そうだったの?じゃ、ちゃんとぷーぷーして飲まなきゃね!」
私は曖昧に微笑み、コーヒーに口を付けた。
苦い…やっぱり、嫌いな味だ。
でも、きっと、青汁よりはマシだ。
ノニよりはずっとマシだ。
こんなのなんてことない。
あとちょっと…あとちょっと!!
私は、自分自身と闘いながら、なんとかコーヒーを飲み干した。
「カナ…一気飲みって…そんなにコーヒー好きだったの?
僕、全然知らなかったよ。
じゃあ、もう一杯もらってくるね!」
「そ…そうでなくて……」
翼君の後姿に思わず伸ばしかけた片手をそっと下ろす…
結局、私はいつもの倍近くの料理と大嫌いなコーヒーを五杯飲む羽目になったのだった…
それも、すべてが私のこの性格のせい。
こんな弱気な性格のせいなんだ!
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