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scene 6

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「それで…俺は…いや、フォーラスはどうしてたんだ?」

「フォーラスに身体を乗っとられていた間の記憶はないのか?」

「あぁ…以前、リュタンの村で乗っとられた時は意識がはっきりとあったんだが、今回は何も…
まさか、俺はまた誰かにひどいことをしたんじゃ…」

「…今回は、あんた、エルスールをひどいめにあわせたようだ。
あやうく殺すとこだったみたいだぜ。」

「エルスールを…!!」

「あぁ、彼女もあんたの姿につい気を許してしまったらしい…」

「それで、彼女は無事なんだろうな!?」

「さっき見ただろう?
相当酷い目にあったらしいが、今じゃピンピンしてるぜ。」

「そうか…なら、よかったが…
しかし、エルスールはどうやって元気になったんだろう?」

「さぁな、そのあたりのことについては俺は何も聞いちゃいないが…」

トレルは、悪魔についての知識はそれなりにあった。
自分が今、こんなに弱っているのもフォーラスに生体エネルギーのようなものを奪い取られたせいだ。
そのおかげでフォーラスは回復した。
エルスールも瀕死だったということを考えれば、きっと誰かにエネルギーを分け与えてもらったはずだ…
トレルは、もしかしたら、エルスールがこのあたりの村の人の命を奪ったのではないかとの不安にかられた。

(もし、彼女がそんなことをしていたとしたら…それは、俺のせいだ…)

「どうかしたか?」

「いや…なんでもない。
それで…あんたがエルスールに協力して俺を助けてくれたんだな?」

「協力といえば協力だが、いってみればお互い様ってとこかな。
実はな…」

ランディはこれまでのいきさつをトレルに話した。

「なるほど…そういうことだったのか。
フォーラスの奴、なんだって村の人達を…
で、村の皆は無事だったのか?」

「あぁ、幸いな事に全員無事だった。」

(全員…)

トレルはその言葉にほっと胸を撫で下ろした。


 
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