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scene 7
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エルスールは川でフォーラスの返り血を洗い流していた。
(くそ・・・まだヤツの血が残っているような気がする)
トレルに自分のこんな姿を見られたくない気持ちと、約束を守れなかった事に対する苛立ちが募る。
フォーラスを殺すのは簡単だった。
エルスールは無抵抗で逃げ惑うフォーラスの背中を一刀し、地面に倒れこんだところを鋭い刀身で心臓めがけ突きたてた。
鮮血が散る。
断末魔が響く。
動かなくなる。
…それだけだった。
たったそれだけでフォーラスはあっけなく絶命した。
浴びた血の臭いが甘美な誘惑を誘う。
その瞬間、エルスールはゾクリと全身に駆け巡る快感を覚え、我に返った。
自分を改めて悪魔であると、自覚したのだ。
ここ20年、トレルが争いを好まないので止めていたが、こうして血を前にすると押さえていた《本能》のようなものが再び自分の中で芽吹こうとしているのが分かる。
「トレル・・・」
エルスールは水面に映る自分の姿から目を逸らした。
そこにいるのは人間なんかじゃない。
人間に化けている醜い心を持った悪魔だ。
流れる血を美しいと思う、トレルが最も嫌う種族だ。
忘れていた……。
「愚かだな」
小さく呟くと、エルスールの姿は景色に溶け込み消えてなくなった。
エルスールは川でフォーラスの返り血を洗い流していた。
(くそ・・・まだヤツの血が残っているような気がする)
トレルに自分のこんな姿を見られたくない気持ちと、約束を守れなかった事に対する苛立ちが募る。
フォーラスを殺すのは簡単だった。
エルスールは無抵抗で逃げ惑うフォーラスの背中を一刀し、地面に倒れこんだところを鋭い刀身で心臓めがけ突きたてた。
鮮血が散る。
断末魔が響く。
動かなくなる。
…それだけだった。
たったそれだけでフォーラスはあっけなく絶命した。
浴びた血の臭いが甘美な誘惑を誘う。
その瞬間、エルスールはゾクリと全身に駆け巡る快感を覚え、我に返った。
自分を改めて悪魔であると、自覚したのだ。
ここ20年、トレルが争いを好まないので止めていたが、こうして血を前にすると押さえていた《本能》のようなものが再び自分の中で芽吹こうとしているのが分かる。
「トレル・・・」
エルスールは水面に映る自分の姿から目を逸らした。
そこにいるのは人間なんかじゃない。
人間に化けている醜い心を持った悪魔だ。
流れる血を美しいと思う、トレルが最も嫌う種族だ。
忘れていた……。
「愚かだな」
小さく呟くと、エルスールの姿は景色に溶け込み消えてなくなった。
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