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scene 9

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「オルジェ、顔色が悪いわ。
少し休みましょう!」

「あぁ、そうだな…」

「あそこに小屋があるぞ!」

エルスールが指差す先には古い小屋があった。




「あそこまで頑張って…!」

「大丈夫だ…」



程なくして、小屋に着いた。
外観以上に、中もずいぶんと荒れ果てていた。

「ひどいわね…」

「崩れないのが不思議なくらいだ。
だが、外にいるよりいくらかはマシだろう。」



そこには長い間、誰も立ち寄ってはいないように見えた。
部屋の中はかび臭く、家具には埃がうずたかく溜まっている。

ケイトは長椅子のほこりを払い、その上にオルジェをそっと寝かせた。



「ほら、やっぱり熱があるわ。」

「たいしたことはないさ。ただの風邪だ。」

「こじれてるんじゃないのか?もうずいぶんと長引いているようだが…」

「オルジェ、待ってろよ。
オレ、すぐに薪を拾ってくるから。」

「では、私も行こう!」

トレルはエルスールと共に薪を探しに外へ出て行った。



あれから、四人はただひたすらに北を目指して歩いてきた。
行き先については、いまだにオルジェは詳しいことを言わなかったが、昨日になってやっと目的地がすぐそばだということを明かした。

「オルジェ、もう少し待っててね。
トレル達が薪を集めてきてくれたらすぐに暖かくなるから…」

「すまないな、迷惑かけて…
ケイトも胃の調子がよくないって言ってたじゃないか。
大丈夫なのか?」

「私なら大丈夫よ。熱もないし、ちょっと胃のあたりが気持ち悪いだけなの。
私もきっとこの寒さにやられたんだわ。」



(それにしても、オルジェの知り合いの人って、一体誰なのかしら?)

こんな最果ての街に、オルジェの知り合いがいるなんて、ケイトには初耳だった。
ユフィルにいた頃はそんな話は聞いたことがない。

(…ってことは、やっぱり旅をしてる間に知り合った人なのかしら?
でも、私もほとんどオルジェとは一緒に行動してたのに…
私と離れてたほんの少しの間にそんなに信頼出来るようになった人って一体…
あ……!)

ケイトは急に駆けだし、外へ飛び出した。



「……ケイト…どうしたんだ?」

「あ…ごめんね…
また気持ち悪くなっちゃって…」

「ケイト…もしかしたら…」

「何?」

「もしかしたら、おまえ、子供が…」

「え…っっ!?」 
 
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