深淵に眠る十字架

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
270 / 291
明けの明星

しおりを挟む
「にゃ~~」

「なんだ、もう起きてきたのか…まだ早いぞ。」



目を細め、すり寄って来た黒猫の身体を抱き上げると、アズラエルはその小さな身体を自分の膝の上にそっと降ろした。



「おまえにもあれが見えるか…
あの赤い星が…」

まだ明けきらない瑠璃色の夜空の中で、一際輝く明るい星…



「……光をもたらす者…か…」



(……おまえは、今、どこに……)







「ハハハハハハ…
性懲りもなく、また現れたか…」

笑い声と共に、金色に輝く長い絹糸のような髪が揺れる…

「ルシファーよ…
いいかげんに悪事を働くのはやめたらどうだ…
おまえ自身、本当はそんなことをすることに嫌気がさしているのではないのか?」

「面白いことを言う男だな。
悪魔に悪事を働くのをやめろというのか…?
それに、私は自分の意思でこんなことをしているのではない。
お前達、人間の欲望がそうさせるのだ。
私は、それにほんの少し手助けをしてやっているだけ…
いわば、人助けのようなものだ。
その証拠に、私が関わった人間達は、皆、私に深く感謝しているようだぞ。」

「馬鹿な!
人間の弱味に付け入り、取り返しの付かない程の闇の世界に引きずり込んでいるのはおまえの方ではないか!」

「おまえは私に対して相当の悪意を持っているようだな。
真実をねじまげて考えている。
人間は、元々醜い心を持ったものなのだ。
それを心の底に押し隠して生きている。
つまり、無理をしているのだ。
本来の心を解放されることを、本当は、皆、待ち望んでいる。
おまえは知らないのか?解放された時の人間の悦びようったらないぞ…
実はおまえ自身もそうなのだろう?
人の手本として真面目に生きることに、本当は疲れきっているのだろう?
あれもだめ、これもだめ…そんなに無理をしてどうする?
解き放て…楽になれるぞ…
本来のお前の悪しき心を解き放て…!
私がいくらでもその手助けをしてやるぞ…」

「愚かな……
おまえは、やはり地に堕ちた者なのだな…
せっかく光輝く世界に生まれていながら……
しかし、それも今日で終わりだ…
おまえを無に還してやろう…私がこの命を賭けて…!」

「ほぉ…そんなことをして良いのか?
おまえがいなくなったらあの美しい妻は、そしてあの無邪気な少年はさぞ悲しむだろうな…」

「……妻や息子は、私のことを必ず理解してくれる…」

「たいした自信だな…」


ルシファーの形の良い桜色の唇に皮肉な笑みが浮かんだ。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は手加減無しに復讐する

田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。 理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。 婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。

どうぞお好きになさってください

みおな
恋愛
学園に入学して一ヶ月。 婚約者の第一王子殿下は言った。 「学園にいる間くらい自由にさせてくれないか。君が王太子妃になることは決定事項だ。だから、せめて学園に通う二年間は、僕は恋がしたい」 公爵令嬢はその綺麗な顔に冷酷な笑みを浮かべる。 「好きになさればよろしいわ」

【完結】メルティは諦めない~立派なレディになったなら

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 レドゼンツ伯爵家の次女メルティは、水面に映る未来を見る(予言)事ができた。ある日、父親が事故に遭う事を知りそれを止めた事によって、聖女となり第二王子と婚約する事になるが、なぜか姉であるクラリサがそれらを手にする事に――。51話で完結です。

退屈令嬢のフィクサーな日々

ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。 直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。

石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~

めぐみ
歴史・時代
お民は江戸は町外れ徳平店(とくべいだな)に夫源治と二人暮らし。  源治はお民より年下で、お民は再婚である。前の亭主との間には一人息子がいたが、川に落ちて夭折してしまった。その後、どれだけ望んでも、子どもは授からなかった。  長屋暮らしは慎ましいものだが、お民は夫に愛されて、女としても満ち足りた日々を過ごしている。  そんなある日、徳平店が近々、取り壊されるという話が持ちあがる。徳平店の土地をもっているのは大身旗本の石澤嘉門(いしざわかもん)だ。その嘉門、実はお民をふとしたことから見初め、お民を期間限定の側室として差し出すなら、長屋取り壊しの話も考え直しても良いという。  明らかにお民を手に入れんがための策略、しかし、お民は長屋に住む皆のことを考えて、殿様の取引に応じるのだった。 〝行くな!〟と懸命に止める夫に哀しく微笑み、〝約束の1年が過ぎたから、きっとお前さんの元に帰ってくるよ〟と残して―。

あなたの幸せを祈ってる

あんど もあ
ファンタジー
ルイーゼは、双子の妹ローゼリアが病弱に生まれたために、「お前は丈夫だから」と15年間あらゆる事を我慢させられて来た。……のだが、本人は我慢させられていると言う自覚が全く無い。とうとう我慢のしすぎで命の危機となってしまい、意図せぬざまぁを招くのだった。 ドアマットだと自覚してないドアマット令嬢のお話。

~後宮のやり直し巫女~私が本当の巫女ですが、謂れのない罪で処刑されたので後宮で人生をやり直すことにしました

深水えいな
キャラ文芸
明琳は国を統べる最高位の巫女、炎巫の候補となりながらも謂れのない罪で処刑されてしまう。死の淵で「お前が本物の炎巫だ。このままだと国が乱れる」と謎の美青年・天翼に言われ人生をやり直すことに。しかし巫女として四度人生をやり直すもののうまくいかず、次の人生では女官として後宮入りすることに。そこで待っていたのは後宮で巻き起こる怪事件と女性と見まごうばかりの美貌の宦官、誠羽で――今度の人生は、いつもと違う!?

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

処理中です...