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気合い入れて頑張ります!

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「その時は、私も頭に血が上って、あんな子…こっちから絶交してやる!って思ったよ。
なんで、告白しないだけで、そんなひどい事言われなきゃいけないんだろうって。
でもね…しばらくして、その子がアメリカに行ったって話を聞いたんだ。
その子はダンスが大好きで、将来はダンサーになりたいってよく言ってた。
 私は調子を合わせて、そうだね、エリならきっとなれるよ!…なんて言ってたけど、心の底ではそんなこと無理だって思ってた。
だって、ダンサーを目指してる人なんて星の数ほどいて、その中で有名なダンサーになれるのはほんの一握りの人だよ。
ちょっとくらいダンスがうまくても、そんなの無理だって…私はまともに考えたことなんてなかったんだ。
でも、エリは…本気だったんだ。
 本気で夢に向かって進んで行ったんだ。
それがわかった時…私…なんだか自分のことがすっごく恥ずかしく思えたんだよ。
 自分でもなんでこんなに?って思うくらいにね。
だって、本当にあの子の言った通りだったんだもん。
 私は、何の努力もせず、最初からどうせだめだからって諦めて、傷付かないように自分を守ってたんだよね。
 楽をしてたんだよ。
たとえ、だめだってわかってても、好きな気持ちが本気だったら、当たって砕ければ良かったんだ。
……それからだよ。私がなんでも本気で進むようになったのは。
 私にはエリみたいに大きな夢はない。
だけど、昔みたいにいいかげんな気持ちで生きるのはやめるって誓ったんだ。
いつか、エリと仲直りしてもらえる私になれるように、出来る限り、頑張ろうって思ったんだ。」

 「さゆみ…」

なんだかとっても意外な話だった。
さゆみとは大学に入ってからの友達で、知り合ってからはけっこう仲良くして来たつもりだったけど、こんなに真面目な話をしたのは初めてだ。

それって…やっぱりリクさんに本気だからだよね。
さゆみは、昔の親友に恥じないように、リクさんを本気で愛するつもりなんだね。
そう思ったら、胸がじーんと熱くなった。

 
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