愛しのカレはV（ヴィジュアル）系

信じられないことが起きました。

２９

＊



 「望結、どうかしたのか？」

 「……え？」

 「なんだよ、さっきからそわそわして。」

 「そ、そわそわなんてしてないよ。」

そう答えた拍子に箸を落とした。



 「ほら～…」

 瑠威の言葉にいらっとしたけど、何気ない顔をして箸を取り換えた。
ポケットの中にはスマホ。
いつもなら部屋に置いてるけど、まだ未練がましくキースさんからの返信を待ってたから。



 「何かあったのか？」

 「何もないよ。」

 私は平静を装い、ごはんを口に運んだ。



 「困ったことがあったら、なんでも言うんだぞ。」

 瑠威の真面目な顔にちょっと複雑な想いを感じた。
そうだよね…瑠威はなにもからかってるわけじゃなく、本心から心配してくれてるんだよね。



 「う、うん…ありがとう。」

 気持ちは本当にありがたいんだけど…言えないよね。
キースさんからのLINEの返信がないなんて…
おかしな風に誤解されても困るし…



「本当に大丈夫なのか？」

 「う、うん…あ、あの…ちょっとさゆみと喧嘩しちゃっただけ。」

 自分では気付いてなかったけど、今日の私はやっぱりちょっとおかしかったみたいだから、何もないで通すのは却って不自然かな？って考えて、そんな嘘を吐いた。