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『瓢箪から駒』ってやつでしょうか?

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「ねぇ、さゆみ…いろいろと想うことはあるかもだけど、迷ったらきっと先に進めなくなると思うんだ。
 瑠威の言うことは正しいかもしれないけど…
私達、まだ若いんだし、失敗したっていくらでもやり直せるよ。
ママが言ってた『経験から得るものがある』っていうのは本当だと思うんだ。
 辛い想いをや悲しい想いをしたとしても…何もしないよりはきっと得るものがあると思う。
 私、応援するから…諦めないで。」

 私の柄に合わないけど…
なんだか妙に語ってしまった。



 「何言ってんのよ。
 私、諦めるなんて一言も言ってないよ。
あんたの言う通り、迷ったら先に進めなくなるから、私は玉砕覚悟でリクに頑張るよ!」

 「そっか、良かったよ!」

 「でも…応援はいらない。」

 「……え?」

 「応援よりも、一緒に頑張りたい。
ね?あんた、キースさんに本気になれないの?」

すぐには答えられなかった。
だって…自分の気持ちなのに、どうなのかよくわからなかったから。



 「どうなの?」

 「正直言って、よくわからない。」

 馬鹿みたいな返事だけど、その通りだから仕方がない。



 「良く分からないって、本気になれるかどうかがわからないってこと?」

 「うん…それもだけど…
私、キースさんのこと、好きなのかどうかもよくわからない。」

 「嫌いなの?」

 「嫌いじゃないよ。
 明るいし楽しいし、見た目も格好良いし、歌が上手いのも素敵だし…」

 「それだけすぐに好きな理由が出てくるのは、好きな証拠だよ。」

 「そ、そうなの!?」

 「そうだよ!」

 本当にそうなのかな?
 私、自分の気持ちに気付いてないだけ?



 (私…キースさんのことが好きなの!?)

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