愛しのカレはV（ヴィジュアル）系

どうにもこうにもパニックなのです！

２５

＊



 （これで大丈夫かな？）



 姿見の前で、何度も角度を変えながら自分の格好を眺める。 



 （うん…ま、こんなもんだね。）



いつもならさゆみと一緒に行くショッピング… 
ひとりで服を選ぶのはなんとなく寂しかった。 
ライブ程気合いは入れてないけど、そこそこ可愛い感じの服を選ぶのは大変だった。 
 考えてみれば、ハイキングの時の服も、たいていはさゆみが選んでくれたものだった。 
だから、はずれがなかったんだよね。 
 今日のは私のチョイスだから、自信ないけど…さゆみにはこんなこと頼めないもん…仕方ないね。 



お化粧もいつもより念入りにして… 
かつらはかぶらず、髪の毛を念入りに梳いた。 
リクさんに髪が綺麗だって言われたことを思い出して、ちょっと照れながら…



（さ、出発だ！）



いざとなると、かなり緊張してしまう。
 待ち合わせの場所に向かい、着いたのは３０分近くも前だった。 



 大丈夫なのかな？ 
こんなに人の多い所で会って、ファンの子にみつからないかな？ 
 目の前を通り過ぎていく女の子達がみんな可愛く見える。
 目立つ子、センスの良い子、スタイルの良い子…
私はどう考えても、綺麗だとか可愛いってタイプじゃない。
 幼い頃からずっと、あまり目立たない、地味な子だった。
さゆみの影響でライブに行くようになって、自分でも確かにちょっとだけマシにはなったと思うけど、それはあくまでも『マシ』になっただけ。
そんな私がどうしてリクさんなんかと… 



そんなことを考えると、なんだかすごく不安になって来る。