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side 翔子

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「潤、あの時、紗夜に告られたんだよね。」

「う、うん、まぁな。」

「それで、OKしたんだよね?」

「まさか。するわけないだろ。」

「えっ!?OKしたんじゃ…」

「なんでだよ。
そりゃあ、告られたのは嬉しかったけど、僕はあの子に何の感情もなかったんだから、OKするはずないだろ。」

「え……」



紗夜は確かに言った。
潤にOKをもらえたって、嬉しそうな顔で。
だから、私はチョコも渡さなかったし、二人の邪魔をしちゃいけないって、二人からなるべく距離を取るようにして…



「潤…本当にOKしてないの?
思い違いじゃない?」

「僕は記憶力は良くないかもしれないけど、そのことはしっかり覚えてる。
なんたって、初めて告られたんだから。
でも、本当にあの子には何の感情もなくて…今でも苗字すら思い出せないんだ。
だから、さすがに付き合おうとは思わなかったよ。」



(そんな……)



じゃあ、あの時、紗夜は私に嘘を吐いて…
その嘘に騙されて、私は潤のことを諦めて…



悔しくて悲しくて、また涙が込み上げた。



紗夜の嘘に惑わされて、私は十年以上も潤から離れてた。
十年…私はそんなにも長い歳月を無駄にしてしまったのかと思うと、身体中から力が抜けていくような感覚を感じた。
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