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黄金週間
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(何がゴールデンなんだか…)
普段から退屈な日々を過ごしてる私に、さらに退屈を押し付けて来るなんて、どこがゴールデンなんだ!
…と、私はひとり怒っていた。
うちの社長は、けっこう外国かぶれなところがあって、せめてゴールデンウィークはまとまった休日を楽しんでくれってことで、4月28日から5月6日までずっと休みという…
私にとっては、嫌がらせでしかない心遣いだ。
ゴールデンウィークなんて、どこに行っても人ばっかりで疲れるだけだ。
そうでなくても、家族連れやカップルが多いこの時期に、ひとりで出かけたいはずがない。
そもそも、私はインドアな人間だし、家にいてもすることないし。
(あぁ、つまんね…)
大きなあくびが出て、少し昼寝でもしようかと思った時…玄関で大きな物音がした。
出てみると、外廊下に荷物が散乱…
「すみません!」
荷物を拾ってた男性が、顔を上げた。
その瞬間…私は恋に落ちた。
「あ、あの…俺、105室に引っ越して来た藤本と言います。」
「は、はい、わ、私は、き、き、き、木下と言います。」
愛想笑いを浮かべたいのに、ひきつって笑えない。
こんなに緊張したのは、一体、いつぶりのことだろう?
高校の時、憧れの先輩はいたけど、結局、一言もしゃべれず仕舞いだったし…
そう、私は恋に対してめちゃくちゃ晩生で、しかも、最近はすっかり干物になりかけていて…
「木下さん、よろしくお願いします。
近くからの引っ越しなんで、このゴールデンウィーク中に自力でなんとかしようと思ったんですが、早速、こんなへましてしまいました。」
照れくさそうに彼はそう言って、とてもキュートな笑みを浮かべた。
100%、好みのタイプなんですけど~!
鼓動がいつもの倍くらいの速さに変わった。
「あ、よ、良かったら、お手伝いしましょうか?」
「いえ、そんな…せっかくのお休みなのに…」
「私…困ってる人を放ってはおけない気性なので…」
「本当に良いんですか?」
「はい!もちろんです!」
自分の部屋も滅多に掃除しないっていうのに、相手がイケメンとなると、どんなに面倒なことも楽しく感じられるのが不思議だった。
私は、朝早くから夜になるまで、毎日毎日、彼の引っ越しを手伝った。
彼と一緒に荷物を運び、一緒にお弁当を食べて…まさに毎日がキラキラ輝くゴールデンウィークだった。
5日の夕方には、荷ほどきもほぼ終わった。
まるで、彼氏といるみたいな最高の数日間だった。
っていうか、もしかしたら、これを機にマジでそんなこともないとはいえないよ…
(きゃーーー)
「あなたのおかげで本当に助かりました。」
「いえ、そんな…」
お礼を言いたいのは私の方。
こんなに充実したゴールデンウィークを過ごせたのも、彼のお陰だもの。
「本当にお疲れ様でした。」
「いえ…」
その時、がちゃりとドアが開いた音がして…
「あ、すごい。もう引っ越し終わったんだ。」
入って来たのは、少々頭の薄そうな若い女…
「うん、木下さんが手伝って下さって…あ、二軒隣の人なんだ。
あ、木下さん…こいつは里奈。」
な、なんだ、なんだ、この展開は…
まさか、まさか…この馬鹿っぽい女…
そ、そんなこと…ないない、あるはずなんてない!
「ウィーッス!里奈っす。圭吾の彼女っす!」
その一言で、私の甘い恋心は弾け飛んだ。
6日は、もはや起き上がる気力もなく、抜け殻となって一日寝て暮した。
普段から退屈な日々を過ごしてる私に、さらに退屈を押し付けて来るなんて、どこがゴールデンなんだ!
…と、私はひとり怒っていた。
うちの社長は、けっこう外国かぶれなところがあって、せめてゴールデンウィークはまとまった休日を楽しんでくれってことで、4月28日から5月6日までずっと休みという…
私にとっては、嫌がらせでしかない心遣いだ。
ゴールデンウィークなんて、どこに行っても人ばっかりで疲れるだけだ。
そうでなくても、家族連れやカップルが多いこの時期に、ひとりで出かけたいはずがない。
そもそも、私はインドアな人間だし、家にいてもすることないし。
(あぁ、つまんね…)
大きなあくびが出て、少し昼寝でもしようかと思った時…玄関で大きな物音がした。
出てみると、外廊下に荷物が散乱…
「すみません!」
荷物を拾ってた男性が、顔を上げた。
その瞬間…私は恋に落ちた。
「あ、あの…俺、105室に引っ越して来た藤本と言います。」
「は、はい、わ、私は、き、き、き、木下と言います。」
愛想笑いを浮かべたいのに、ひきつって笑えない。
こんなに緊張したのは、一体、いつぶりのことだろう?
高校の時、憧れの先輩はいたけど、結局、一言もしゃべれず仕舞いだったし…
そう、私は恋に対してめちゃくちゃ晩生で、しかも、最近はすっかり干物になりかけていて…
「木下さん、よろしくお願いします。
近くからの引っ越しなんで、このゴールデンウィーク中に自力でなんとかしようと思ったんですが、早速、こんなへましてしまいました。」
照れくさそうに彼はそう言って、とてもキュートな笑みを浮かべた。
100%、好みのタイプなんですけど~!
鼓動がいつもの倍くらいの速さに変わった。
「あ、よ、良かったら、お手伝いしましょうか?」
「いえ、そんな…せっかくのお休みなのに…」
「私…困ってる人を放ってはおけない気性なので…」
「本当に良いんですか?」
「はい!もちろんです!」
自分の部屋も滅多に掃除しないっていうのに、相手がイケメンとなると、どんなに面倒なことも楽しく感じられるのが不思議だった。
私は、朝早くから夜になるまで、毎日毎日、彼の引っ越しを手伝った。
彼と一緒に荷物を運び、一緒にお弁当を食べて…まさに毎日がキラキラ輝くゴールデンウィークだった。
5日の夕方には、荷ほどきもほぼ終わった。
まるで、彼氏といるみたいな最高の数日間だった。
っていうか、もしかしたら、これを機にマジでそんなこともないとはいえないよ…
(きゃーーー)
「あなたのおかげで本当に助かりました。」
「いえ、そんな…」
お礼を言いたいのは私の方。
こんなに充実したゴールデンウィークを過ごせたのも、彼のお陰だもの。
「本当にお疲れ様でした。」
「いえ…」
その時、がちゃりとドアが開いた音がして…
「あ、すごい。もう引っ越し終わったんだ。」
入って来たのは、少々頭の薄そうな若い女…
「うん、木下さんが手伝って下さって…あ、二軒隣の人なんだ。
あ、木下さん…こいつは里奈。」
な、なんだ、なんだ、この展開は…
まさか、まさか…この馬鹿っぽい女…
そ、そんなこと…ないない、あるはずなんてない!
「ウィーッス!里奈っす。圭吾の彼女っす!」
その一言で、私の甘い恋心は弾け飛んだ。
6日は、もはや起き上がる気力もなく、抜け殻となって一日寝て暮した。
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