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雨の日は…
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空は重苦しい鉛色…
もう七年も経つっていうのに、雨の日には今でもふと思い出してしまう。
ある雨男のことを…
***
「来なくて良いって言ったのに…」
「そんなの私の勝手でしょ。」
彼は、やっぱり本気だ。
もしかしたら……
そんな儚い希望を胸にここまでやってきたけれど、彼の気持ちは変わらないみたいだ。
「じゃあ…そろそろ行くから。」
「……元気でね。」
「おまえもな……」
彼は一度も振り返らなかった。
でも、その方が良かった。
その時、私は外の雨よりも酷い涙を流していたから。
***
「沙織…俺、やっぱりフランスに行く!」
亨がそんなことを言い出したのも、雨の日だった。
「え?でも…絵の勉強なら、日本にいても出来るんじゃないの?」
「沙織…俺は本気で画家になりたいんだ。
そのためにはやっぱり本場で修業しないとな。」
亨の夢を応援したいとは思ったけれど…そうも思えなくなった。
なぜなら、彼は私と別れるって言い出したのだから。
「どうして?どうして別れなきゃならないの?
他に好きな人でも出来たの?」
「そんな奴いない。
ただ、俺は本気で絵を勉強したいから。」
「だったら、別れることなんてないじゃない!」
「俺の修行はいつ終わるかわからないんだ。
だから、別れる。」
「私、待つから…いつまでだって待つから…」
「そんなこと、させられない。」
彼の決意は固かった。
私は何度も説得したけれど、彼の気持ちが変わることはなかった。
そして、土砂降りの雨の日…
彼は、フランスに向かって旅立った。
落ちて…落ちて…どん底まで落ち込んで、特に雨の日は、ただそれだけで気分が酷く落ち込んで、体調も悪くなるし、いつも泣いてばかりいた。
そこから何年もかかってやっと立ち直って…
今は、雨の日にも泣くことはなくなった。
だけど、今でも雨の日には想ってしまう…どうしても思い出してしまう。
雨男の彼のことを…
(え……)
雑踏の中に、彼に似た後ろ姿をみつけた。
そんなはずなんてないのに…
七年も経ったのにまだ彼を忘れられないなんて、私はなんてしつこい女なんだろう?
思わず、苦い笑みが浮かぶ。
彼に似た後ろ姿の男性が、不意に立ち止まり、そして、後ろを振り向いた。
その顔を見た途端、私の笑みが消えた。
(……これは……夢?)
男性は、傘を落とし、ただじっと私をみつめていた。
彼の唇が、小さく動いて…
濡れるのにも構わず、彼は雨の中を駆けて来る。
「沙織…!」
彼の両腕が私を抱き締めた。
「嘘……」
こんなこと、あるはずがない…
だって、彼はフランスに行って…
私達は別れて…
そうだ、きっと、これは夢…
「……今日もやっぱり雨だったな。」
「亨は雨男だもん。」
「会いたかった…なんて言ったら怒る?」
私は首を振った。
「私も、ずっと会いたかったから…」
これが夢でも幻でも構わない…
私たちは、そのまま雨に打たれていた。
辛くて長かった年月を、洗い流してしまうかのように…
もう七年も経つっていうのに、雨の日には今でもふと思い出してしまう。
ある雨男のことを…
***
「来なくて良いって言ったのに…」
「そんなの私の勝手でしょ。」
彼は、やっぱり本気だ。
もしかしたら……
そんな儚い希望を胸にここまでやってきたけれど、彼の気持ちは変わらないみたいだ。
「じゃあ…そろそろ行くから。」
「……元気でね。」
「おまえもな……」
彼は一度も振り返らなかった。
でも、その方が良かった。
その時、私は外の雨よりも酷い涙を流していたから。
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亨がそんなことを言い出したのも、雨の日だった。
「え?でも…絵の勉強なら、日本にいても出来るんじゃないの?」
「沙織…俺は本気で画家になりたいんだ。
そのためにはやっぱり本場で修業しないとな。」
亨の夢を応援したいとは思ったけれど…そうも思えなくなった。
なぜなら、彼は私と別れるって言い出したのだから。
「どうして?どうして別れなきゃならないの?
他に好きな人でも出来たの?」
「そんな奴いない。
ただ、俺は本気で絵を勉強したいから。」
「だったら、別れることなんてないじゃない!」
「俺の修行はいつ終わるかわからないんだ。
だから、別れる。」
「私、待つから…いつまでだって待つから…」
「そんなこと、させられない。」
彼の決意は固かった。
私は何度も説得したけれど、彼の気持ちが変わることはなかった。
そして、土砂降りの雨の日…
彼は、フランスに向かって旅立った。
落ちて…落ちて…どん底まで落ち込んで、特に雨の日は、ただそれだけで気分が酷く落ち込んで、体調も悪くなるし、いつも泣いてばかりいた。
そこから何年もかかってやっと立ち直って…
今は、雨の日にも泣くことはなくなった。
だけど、今でも雨の日には想ってしまう…どうしても思い出してしまう。
雨男の彼のことを…
(え……)
雑踏の中に、彼に似た後ろ姿をみつけた。
そんなはずなんてないのに…
七年も経ったのにまだ彼を忘れられないなんて、私はなんてしつこい女なんだろう?
思わず、苦い笑みが浮かぶ。
彼に似た後ろ姿の男性が、不意に立ち止まり、そして、後ろを振り向いた。
その顔を見た途端、私の笑みが消えた。
(……これは……夢?)
男性は、傘を落とし、ただじっと私をみつめていた。
彼の唇が、小さく動いて…
濡れるのにも構わず、彼は雨の中を駆けて来る。
「沙織…!」
彼の両腕が私を抱き締めた。
「嘘……」
こんなこと、あるはずがない…
だって、彼はフランスに行って…
私達は別れて…
そうだ、きっと、これは夢…
「……今日もやっぱり雨だったな。」
「亨は雨男だもん。」
「会いたかった…なんて言ったら怒る?」
私は首を振った。
「私も、ずっと会いたかったから…」
これが夢でも幻でも構わない…
私たちは、そのまま雨に打たれていた。
辛くて長かった年月を、洗い流してしまうかのように…
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