1ページ劇場③

ルカ(聖夜月ルカ)

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三連敗

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「くっそー!なんでないんだよ!」



 俺は、時計を気にしながら、駅への道を走り抜けた。
 今日は、のど自慢大会の予選の日だ。
だが、仕事の都合で遅くなってしまった。
 大慌てで会社を飛び出て来たのは良いが、その際になんとスマホを忘れて来てしまった。
 会場に電話して、今向かってるから何とか出させてほしいと連絡したいのだが、公衆電話がどこにもない。
 最近は、スマホばかり使っていたから、公衆電話のことなんて気にも留めたことはなかったが、まさかこんなにも少なくなってるなんて…
あぁ、全くなんてことだ。
 俺は、何が何でも今日の予選会には行かなくてはならない。
なんせ、俺のこれから一月の運命がかかっているのだから。



 「おい、来月、県内ののど自慢大会があるの知ってるか?」

 「へえ、そうなのか?」

 「お前は確かに歌はうまい。それは認める。
でも、のど自慢大会の予選は無理だ。
 県内にはうまい奴はごまんといるからな。」

 「なんだと?予選くらいなら、俺は通る自信がある。」

 「それを過信って言うんだよ。……なんなら賭けるか?」

 「おうよ!受けて立とうじゃないか!」



 俺には自信があった。
 全国とまでいったら難しいかもしれないが、県内の予選くらいなら絶対に通る!
しかも、このところは俺の二連敗だし、この賭けでなんとしても雅樹に勝ちたいんだ!



 幼馴染の雅樹と俺は、子供の頃から仲良しで…
大人になった今でもしょっちゅう会う仲だ。
なんというか、あいつとは好きなものが似てるんだよな。
 子供の頃の戦隊ものに始まり、大人になってからは酒と賭け事だ。
 賭け事とはいっても、たいしたもんじゃない。
 俺とあいつの賭けの対象は、酒だ。
 負けた方が一か月の飲み代を払うんだ。
でも、俺も雅樹も酒飲みだから、あなどれない金額になってしまう。
 今度こそは、あいつに勝たなければ!



 電車に乗り込み、俺は時計を見て焦っていた。
 間に合うだろうか?
 間に合わなかったら、今回の賭けはなし!…なんてことにはならないよな。
 予選に通らない限り、俺の負けだ。



 (やった!)



 幸いなことに、俺はなんとか予選に間に合うことが出来た。



 「では、次…〇〇市からお越しの北村浩二さん。」

 「は、はいっ!」

イントロが流れ始めた時…



「浩二、頑張れよ!」



 雅樹だった。
わざわざ、来てくれたのか…なんだか妙に照れ臭い。



うまく歌えた。
 人は多かったけど、あがることもなく、とても良い気分で歌えた。



 ***



 「畜生…!」

 「だから、言っただろ?」

 残念なことに、予選は通過出来なかった。
 審査員の馬鹿野郎!
こんなことなら、予選に間に合わない方がまだ良かったかもしれない。
 早速、その晩から、俺は雅樹に酒をおごる羽目になってしまった。
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