1ページ劇場③

ルカ(聖夜月ルカ)

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僕はおじさん

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「わぁ、すごいじゃない!綺麗だねぇ…」

リビングに飾られたものを見て、俺は思わずそう言った。
ごく素直な感想だった。
 妻は、その言葉に機嫌の良い顔で微笑む。



 「こ~れ~も、愛…あれも、愛、たぶん、愛、きっと愛…」

 思わず口を突いて出た僕の鼻歌に、妻はきょとんとした顔をしている。



 「あれ……?もしかして知らない?『愛の水中花』」

 「知らない。なに、それ?」

 出たよ、出たよ…ジェネレーションギャップっていうやつが。
 妻は、僕より19歳年下で、今年30歳になったばかり。
この曲は、確か40年くらい前のものだから、知らないのも当然だ。
 僕だって、当時はまだ小学生だったんだから。



 大ヒットしたこの曲は、まるで女神様みたいに綺麗な女優さんが、なんと、バニーガールの格好で歌ってて…
その頃の僕は、バニーガールなんて知るはずもなかったけれど、滲み出る大人の色香のようなものにドキドキしたものだ。
もちろん、テレビを見る時は、興味のないような顔をして、まわりにいる家族に気付かれないようにちらちらとのぞき見ていた。



 「ねぇ、どうしたの?この水中花。
もしかしてこれも手作りとか?」



そう、僕の妻はなにしろハンドメイドが好きなんだ。
 家の中には、彼女が作った小物で溢れている。
 今回のものは、ガラスの瓶に入れられた水中花だ。



 「なによ、水中花、水中花って。
これは、水中花じゃなくて、ハーバリウム!」

 「ハーバ…リウム??」

 「そうよ、植物標本のことなの…」

 彼女の蘊蓄が始まった。
ハーバリウムなるものについて、彼女は熱く語る。



 「つまり…植物のオイル漬けってことだね?」

 「もう~っ!鰯のオイル漬けみたいに言わないで!
ほら、見てよ。
 下に入ってるのはパワーストーンなのよね。
 夫婦の絆が深まるって石なのよ。
これは、私と淳ちゃんの幸せを願って作った、特別なハーバリウムなの。
わかった?」

 「う、うん、わかった!
 僕、毎日、この水中花…じゃない、ハーバ…えっと、ハーバ…」

 「ハーバリウム!」

 「そうそう、ハーバリウム!このハーバリウムを毎日拝むよ。」

 「拝むって、淳ちゃん…
お地蔵さんじゃないんだから…」

 呆れたような顔で、妻が小さな溜め息を吐く。
 19歳の年齢差は確かに高い壁だけど…でも、これでも僕達はけっこううまくいっている。

 
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