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003:こだま

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「あんたがここに来るまで何日かかった?」

「…それがよくわからないんだ。
数日はかかってると思うんだけど…」

「やっぱりそうか。
俺はランプの灯かりをいっぱいにして出て来たから……
缶詰があの日なくなって……
……多分、5日か6日くらいじゃないかと思うんだけど。」

セスは記憶を辿るように、言葉を紡いだ。



「僕もそのくらいかもしれない…」

「じゃあ、ここはちょうど真ん中あたりってことなのかもしれないな。
先のことを考えたらまた気分が落ちこむけど、広い場所ってだけで、ここはなんだか天国みたいに思えるな。」

「天国じゃなくて地獄かもしれないよ…」

「どういう意味なんだ?」

「朝になればわかるよ…」

「朝?こんな所にいて朝か晩かなんてわかんのか?」

「そうだよ。わかるんだ…」

セスは、食事をしたためか、フォルテュナと出会えたためなのかはわからないが、かなり落ちつきを取り戻しているようだった。

二人の話は尽きることがなかった。
主にセスが率先して話し、フォルテュナはそれに相槌を打ったり、質問に答えるだけではあったが二人の会話はずっと続いていた。
そのうちに、あたりが少しずつ明るくなっていく…



「あ……
灯かりが…」

朝が来て、セスはやっとフォルテュナの言ったことを理解する。



「そうか…それで、朝だか夜だかわかるって言ったんだな。」

そう呟いたセスの姿が明るさに照らされ、だんだんと見えてくる。
年の頃は二十歳前後か…
一目で快活そうな印象を受ける青年だった。



「あ…フォルテュナ…
あんたの耳、変わってるな!」

「そ…そうかい?」

「へぇ…すごく長いんだな!
あんたの種族は皆こんな耳なのか?
この耳だと普通の耳よりよく聞こえたりするのか?」

「まぁ…そうだな。」

セスは無邪気な子供のように思ったことをすぐに口にした。
そんなセスが面白くて、フォルテュナはくすりと笑う。
それは、この洞窟に入って初めての笑いだった。

 
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