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働くことも出来ず、満足に家事も出来ない。
そんな私のことを翔吾さんのご両親がお許しになることはないと思っていたのに、私の想いと現実はあまりにも違いすぎて、私はすっかり混乱してました。



「紗季さん、そのこと以外に何か気になることでもあるの?」

「え…えっと……」

言わない方が良いことはわかっていました。
だけど、私は混乱していたせいか、言ってしまったのです。



「私、恋愛経験が少なくて…
だから、自分の気持ちがよくわからないんです。
私がどのくらい翔吾さんのことを好きなのか、が…
ご、ごめんなさい!」

「まぁ。」

お母様はきっと驚かれたでしょうし、呆れられたでしょうし、失礼だとも思われたことでしょう。
今度こそ、完全に嫌われた、と思いました。



「今時珍しい程、真面目なお嬢さんだな。
しかも、とても正直だ。」

(え?)

お父様は意外にもにこにこされていました。



「あなたが、紗季さんを護ってあげたいっていう気持ちが良くわかったわ。
本当に純情な方ね、紗季さんって。」



(私を…護りたい?)



私と目が合った翔吾さんは、優しく微笑みながら頷きました。
まるで、私の心の声を聞いたかのように。
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