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誤算

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『おい、ジュリアン、いつまで寝てるつもりなんだ?
起きなくて良いのか?』

「……ん……あと少し……」









「あぁぁぁぁぁーーーっっ!」

しばらくして目を覚ましたジュリアンは大きな声をあげた。 




「おい、てめぇ!なんでもっと早くに起こしてくれなかったんだ!」

『私は起こしてやったぞ。
おまえが起きなかったのではないか。
それに、私はおまえのモーニングコール係りではない。』

「本当に起こしたのか?
全然記憶がないぞ。
あ~あ…もう昼過ぎじゃないか…」

ジュリアンは枕もとに置いた懐中時計をうらめしそうにみつめ、大きな溜息を吐いた。



「こんな時間から行ったんじゃ、少し掘っただけですぐに夜になっちまう。
今日はもうダメだな。」

『昨夜、あんなに飲むからだぞ…
帰って来た時はべろべろだったじゃないか。
あんな飲み方をしていたら…』

「あぁ、うるさい、うるさいっ!
小うるさい女房みたいなこと言うなよ。
さてと……飯でも食うか。」

エレスの言葉をさえぎり、ジュリアンが顔を洗っていると突然地面が大きく揺れた。



「う、うわぁ~~っ!!」

ジュリアンは、バランスを崩しそうになる身体を支え、洗面台にしっかりと掴まった。



『地震だな。』 

「び…びっくりした!
かなり、でかかったな。
こんなでかい地震は初めてだ。
あ…」

テーブルの上にあった水差しが床に落ちて割れていた。
ジュリアンが部屋の外に出ると、宿にいた客が廊下に集まり、ついさっきの地震のことを話しあっていた。
皆、一様に驚いてはいたが、怪我をしている者はいないようだ。



「ポールは大丈夫だったのかな?
こんなことなら家を聞いておけば良かった。
あ、酒場の奴なら知ってるかな?」

ジュリアンは、早速、酒場へ向かった。
酒場の床には割れた酒瓶やグラスの破片が散らばり、ひどい有り様だった。
怪我をしている酔っ払いもいる。
バランスを崩し、倒れて破片で傷付いたようだ。



「ジュリアン!」

酒場を出たジュリアンは、走って来るポールと出会った。



「ポール、無事だったか!」

「あぁ、俺ん家はろくに荷物もないから、たいしたことはなかった。
あんたのことが心配で、宿屋に向かってた所なんだ。とにかく無事で良かったよ。
俺、心配だから今から炭鉱の方に行ってみるよ。」

「炭坑に?なら、俺も行こう!」

ジュリアンとポールは炭鉱へ向かう。
どちらの方が震源に近いのかはわからないが、もしや炭坑が崩れてはいないかと二人は心配していた。
炭坑ではネイサンを始め大勢の鉱夫達が働いている。
地震の被害が及んでいれば、大惨事だ。
不安な気持ちを胸に抱えた二人が炭鉱に着いた頃には、あたりはすっかり暗くなっていた。
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