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田中さんはやめないでよ。
「私も出来ることがあれば協力するから、頑張ってよね。」

「え?は、はい。」

「庶民の同僚がいるかどうかはかなり大きな問題だからね。
お昼もひとりで食べるの寂しいし。」

「は、はい。」

確かにそうだね。
あぁ、お弁当なんて作って来なくて本当に良かった。
作って来てたら、逆の意味できっと注目の的になってたね。



「あの…ところで、社長ってどんな人ですか?」

私はふと頭に浮かんだ質問を相田さんにぶつけてみた。



「どんなって…あの通りだよ。あなたも知ってると思うけど、能力主義でけっこうクール。」



能力主義?そうかな?そうだったら、私なんか雇うかな?
クールっていう感じもしないような…



「でも、それだけじゃないよ。
あの社長、社員のことはかなり見てるからね。
だから、真面目にやってる人のことはちゃんと評価してくれる。
それは、働く側としてもすごく嬉しいことだよね。」



へぇ、そうなんだ。
意外と評判は良い人なんだね。



「あ、良かったらLINE交換しない?」

「は、はい、お願いします。」

相田さんにはこれからもいろいろとお世話になるだろうし、親しくしてもらえるのはありがたい。
声かけてもらって、本当に良かったよ。



「あ、いけない!もう時間が…!」

ふと見上げた壁の時計に私は声を上げた。



「大丈夫だよ。
お昼休みは2時までだから。」

「そうなんですか?」

「うん、セレブは食事の時間もけっこう大切にするみたいだからね。」



それなら十分間に合う。
セレブってさすがに優雅なんだなぁ。
以前の会社では、お昼休みは1時間しかなかったから、かきこむみたいにして大慌てで食べなきゃいけなかったもの。
まぁ、たいていの会社がそんな感じだと思うけど…
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