ラッキーアイテムお題短編集6

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
11 / 43
ポイントカード(おうし座)

しおりを挟む
「父さんは、病気がわかってからも、あんたには絶対に知らせるなって言ってね…
手術の時もだよ…
その上、葬式にも呼ぶなって言ってたんだよ。
言うのは骨になってからで良いって…
きっと、衰えた自分の姿を見たらあんたが心配すると思ったんだと思う。
でも、さすがにそんなことは出来ないから知らせたんだけど、あんたは取引先とのゴルフがあるから来れないって言った…
あの時、私はどれだけ本当のことを言いたかったか…」

「私…そのことを心の底では良い気味だって思ってた。
あんたのことばかりを考える父さんを恨んでたんだ。
でも、先生に覚悟して下さいって言われて…本当に父さんがこのまま死ぬんだって思ったら、そんな気持ちも吹き飛んで…
あんたが来てくれて本当によかったって思ったんだよ…
来てくれなかったら、私も一生悔いが残ったと思う…
本当にありがとう…達也…」

「姉さん……」

僕の知らない所で、皆、それぞれに辛い想いをしていたことにやっと僕は気付いた。
父に嫌われ、家族とも疎遠になって、一人ぼっちの寂しさを仕事だけに打ち込んで…
それでもどうにも満たされないまま、僕は人生を投げやりに生きていた。
だけど、本当は僕は嫌われていたわけでもなんでもなく…
誰よりも深く父に愛されていた。
苦しんでいたのは僕だけじゃなかった。

それがわかっただけで、冷えきった僕の心に温かな血が流れ出す想いだった。







「じゃあ、達也…
気をつけてね。」

「母さんのことは心配しなくて大丈夫だから。」

僕は小さく頷くと、二人に背を向け玄関の扉を開けた。




(……こ…ここは……!)



僕がいたのは、通い慣れた職場だった。
僕の実家の家の前にいるはずなのに、なぜ僕はこんな所に…
ふと、目をやった時計の時刻に僕は見覚えがあった。



(まさか…これはあの日…?
ポイントカードにあったあの店を探しに行ったあの日…?)



隣の部屋に向かい、そこにいた社員に日にちを尋ねると、やはりあの日のあの時間…
そう、僕がキリーの店に向かう前のあの日のあの時間だ。



(じゃあ、あれはなんだったんだ?
あの体験が全部夢だったとでも言うのか?
いや、そんなことはありえない。
僕は眠ってなんかいないんだから…でも、だったら、あれは……)

僕は、部屋を飛び出した。
もちろん行き先はキリーの店だ。
あの店で、おかしな旅行券を押し付けられてからこんなことになったのだから、あそこへ行けばきっとなにかがわかる。 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

処理中です...