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リゴレット王国

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 「サキ、もう少しだからな。
ほら、あそこに関所があるのが見えるだろ?
あれがリゴレットの関所だ。」



あれからまた時は流れ…
私達は、アンセルさんのいるリゴレットの城下町に近付いていた。



 今度こそ、親友に会えると思っているせいか、マリウスさんは晴れやかな顔をしていた。
それに引き換え、私はまだフェルナンさんのことを引きずっていて…
とてもじゃないけど、元気なんか出て来ない。



こんなことじゃいけない。
 早くフェルナンさんのことは忘れようって思うのに、全然忘れられないどころか、却って辛くなる始末。



 一緒にいたのはほんの数か月だったけど…
でも、私の心の中で、フェルナンさんの存在は日々大きくなっている。



 (フェルナンさん…会いたいよ……)



 不意に込み上げた熱い涙を、私は俯いてそっと拭った。
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