201 / 258
side フェルナン
1
しおりを挟む
「本当に大丈夫なのですか?」
「そなたはやけに心配性なのだな。
友人も連れて行くと言ってあるから、何の問題もない。」
そろそろ、ヴァリアンを離れようかと考えていた時、私はリゴレットで開かれる舞踏会のことを聞いた。
サキの回復を祝う舞踏会だとのことだった。
しかも、ルーサーが私に一緒に行こうと言い出したのだ。
確かに、サキには会いたい。
話せなくとも、サキの姿を見るだけで良い。
だが、その反面、そんな自分がとても未練がましく思えた。
サキと私は、すでに住む世界が違う。
どれほど辛くとも、サキはもう諦めなければならない相手となってしまったのだ。
しかも、私はダンス等踊ったこともない。
「私はダンスが苦手ですから、遠慮しておきます。」
「何を言っている。ダンス等容易いものだ。
侍女と練習すれば良い。
舞踏会まで、まだ日はあるのだから。」
結局、私はダンスを習うことになってしまった。
ダンスの踊れない貴族等、いるだろうか?
こんなことから、私の正体がバレるのではないかと心配したが、それは杞憂に終わった。
覚えが良いと侍女におだてられ、私は調子に乗って、楽しくダンスの練習を続けた。
考えてみれば、ルーサーに連れて行ってもらわなければ、舞踏会には行けるはずもなかったのだ。
マリウスにも招待状は届いているかもしれないが、あんな別れ方をしたのだ。
今更、一緒に連れて行って欲しいとは言い難い。
(サキの姿をしっかりと目に焼き付けて来よう。)
きっと、これは天から与えられたプレゼントなのだ。
私はそう思うことにした。
「そなたはやけに心配性なのだな。
友人も連れて行くと言ってあるから、何の問題もない。」
そろそろ、ヴァリアンを離れようかと考えていた時、私はリゴレットで開かれる舞踏会のことを聞いた。
サキの回復を祝う舞踏会だとのことだった。
しかも、ルーサーが私に一緒に行こうと言い出したのだ。
確かに、サキには会いたい。
話せなくとも、サキの姿を見るだけで良い。
だが、その反面、そんな自分がとても未練がましく思えた。
サキと私は、すでに住む世界が違う。
どれほど辛くとも、サキはもう諦めなければならない相手となってしまったのだ。
しかも、私はダンス等踊ったこともない。
「私はダンスが苦手ですから、遠慮しておきます。」
「何を言っている。ダンス等容易いものだ。
侍女と練習すれば良い。
舞踏会まで、まだ日はあるのだから。」
結局、私はダンスを習うことになってしまった。
ダンスの踊れない貴族等、いるだろうか?
こんなことから、私の正体がバレるのではないかと心配したが、それは杞憂に終わった。
覚えが良いと侍女におだてられ、私は調子に乗って、楽しくダンスの練習を続けた。
考えてみれば、ルーサーに連れて行ってもらわなければ、舞踏会には行けるはずもなかったのだ。
マリウスにも招待状は届いているかもしれないが、あんな別れ方をしたのだ。
今更、一緒に連れて行って欲しいとは言い難い。
(サキの姿をしっかりと目に焼き付けて来よう。)
きっと、これは天から与えられたプレゼントなのだ。
私はそう思うことにした。
0
あなたにおすすめの小説
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ
汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。
※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる