23 / 23
偽り
23
しおりを挟む
「母さん、待って!
私…何も死のうとしたわけじゃないわよ!」
「だって、あんた…」
「私は…あの百合を…」
「百合?」
「そう…ハリー、覚えてる?
私みたいな花だって言ってくれたあのオレンジ色の百合の花。
ハリーがこの町を出て行ってから、私は毎日寂しくなるとあの花を見に行ってたの。
あの花を見たら、あなたと川辺りを散歩したあの日のことが思い出されて、一時でも寂しさを忘れることが出来たから。
ハリケーンであの百合が流されてしまうかもしれないと思ったら、なんだかいてもたってもいられない気持ちになって…」
「それで、あの百合を取りに行ったのか?」
「そう…やっと手が届いたと思ったら、足元が滑って川に落ちてしまって…」
「馬鹿野郎!!
もしも、俺達が間に合わなかったらどうなってたと思うんだ!!
そんなことになったら、皆がどれほど悲しむか考えなかったのか!!」
「ご、ごめんなさい、ハリー…」
「ハリー、マージも反省してるんだ。そうきつことを言うなよ。
とにかく、無事で良かったじゃないか。
それに元はといえば、あんたがマージに何も言わずに出て行くからこんなことになったんだぜ。
許してやんなよ。」
「……そうだな…」
*
ジュリアンが部屋に戻ると、エレスがにこやかな顔でジュリアンを出迎えた。
「どうしたんだ?えらく機嫌の良い顔をして…」
『うまくいったようだな。』
「見てたのか?」
『いや…わかったのだ。』
「わかった?どういうことだ?」
『そのうちにわかることだ…』
ジュリアンのその問いに、エレスはそう答えると詳しいことは話さずにただ微笑むだけだった。
「チェッ、またそれかよ!」
*
やがて次の日、ジュリアンはこの町を離れることにした。
気にかかっていた二人のことが丸くおさまり、ジュリアンは清清しい気持ちを感じていた。
「ジュリアン、本当に世話になったな。
気が向いたら、またいつでも訪ねてくれよ!」
「ジュリアンさん、どうもありがとうございました。
私達がこうなれたのも、あなたが下さったあのガーネットのおかげかもしれませんね。」
「ガーネット?何のことだ?」
「ハリーは気にしなくて良いの!」
「ハハハ…じゃあ、二人とも元気でな!」
ハリーとマージに手を振りながら、ジュリアンは歩き出した。
傍らを歩くエレスは、昨日からずっと嬉しそうな顔をしている。
「おい、なんでそんなににやにやしてるんだ?」
『ちょっと嬉しいことがあってな…』
「で…その嬉しいことってのは秘密なんだな?」
『その通りだ…』
「……やっぱりな…」
相変わらずマイペースなエレスに、ジュリアンは小さな溜息を吐いた。
私…何も死のうとしたわけじゃないわよ!」
「だって、あんた…」
「私は…あの百合を…」
「百合?」
「そう…ハリー、覚えてる?
私みたいな花だって言ってくれたあのオレンジ色の百合の花。
ハリーがこの町を出て行ってから、私は毎日寂しくなるとあの花を見に行ってたの。
あの花を見たら、あなたと川辺りを散歩したあの日のことが思い出されて、一時でも寂しさを忘れることが出来たから。
ハリケーンであの百合が流されてしまうかもしれないと思ったら、なんだかいてもたってもいられない気持ちになって…」
「それで、あの百合を取りに行ったのか?」
「そう…やっと手が届いたと思ったら、足元が滑って川に落ちてしまって…」
「馬鹿野郎!!
もしも、俺達が間に合わなかったらどうなってたと思うんだ!!
そんなことになったら、皆がどれほど悲しむか考えなかったのか!!」
「ご、ごめんなさい、ハリー…」
「ハリー、マージも反省してるんだ。そうきつことを言うなよ。
とにかく、無事で良かったじゃないか。
それに元はといえば、あんたがマージに何も言わずに出て行くからこんなことになったんだぜ。
許してやんなよ。」
「……そうだな…」
*
ジュリアンが部屋に戻ると、エレスがにこやかな顔でジュリアンを出迎えた。
「どうしたんだ?えらく機嫌の良い顔をして…」
『うまくいったようだな。』
「見てたのか?」
『いや…わかったのだ。』
「わかった?どういうことだ?」
『そのうちにわかることだ…』
ジュリアンのその問いに、エレスはそう答えると詳しいことは話さずにただ微笑むだけだった。
「チェッ、またそれかよ!」
*
やがて次の日、ジュリアンはこの町を離れることにした。
気にかかっていた二人のことが丸くおさまり、ジュリアンは清清しい気持ちを感じていた。
「ジュリアン、本当に世話になったな。
気が向いたら、またいつでも訪ねてくれよ!」
「ジュリアンさん、どうもありがとうございました。
私達がこうなれたのも、あなたが下さったあのガーネットのおかげかもしれませんね。」
「ガーネット?何のことだ?」
「ハリーは気にしなくて良いの!」
「ハハハ…じゃあ、二人とも元気でな!」
ハリーとマージに手を振りながら、ジュリアンは歩き出した。
傍らを歩くエレスは、昨日からずっと嬉しそうな顔をしている。
「おい、なんでそんなににやにやしてるんだ?」
『ちょっと嬉しいことがあってな…』
「で…その嬉しいことってのは秘密なんだな?」
『その通りだ…』
「……やっぱりな…」
相変わらずマイペースなエレスに、ジュリアンは小さな溜息を吐いた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる