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ルカ(聖夜月ルカ)

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005. 交易都市

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私がマスターの問いかけに答えようとしたその刹那…

「今、『糸たぐり屋』って言ったか?」

年配のあの客が私達の方を向いてそう言った。



「え…ええ。
もしかして、『糸たぐり屋』のことをなにかご存知なんですか?」

「ご存知もなにも…
わしがその『糸たぐり屋』じゃ。」

「えっ!まさか…!」

私は老人の席の前の椅子に移動し、老人に「糸たぐり屋」の話を尋ねた。



「今時、『糸たぐり屋」のことを覚えててくれる人がいるなんて、嬉しいもんじゃな。
あんた、誰からその話を聞いたんだね?」

私は酒場での出来事を話した。



「そうだったのか…それでわしのことを探してくれたんだな。
だが…せっかく探してくれたのに申し訳ないんじゃが…
わしは…あの『糸たぐり屋』はインチキだったんじゃ。」

「インチキ?!」

「あぁ…あの頃のわしは金に困っていてな。
賭博で大きな借金を作り、逃げるように故郷を離れたんじゃ。
こんな大きな町なら働き口もあるだろうと思ったんじゃが、若い頃のわしはとにかく生意気で根気もなく不真面目で…
そんなことじゃから勤めてもすぐにクビになってしまう。
こんなことを続けてたんじゃあ、のたれ死にだ。
元手がなくても儲けられる手段は何かないものかと考えた時に思いついたのが占い師じゃった。
ところが、わしは占いの方法も全く知らない。
そこでいろいろ考えてるうちに思いついたのが『糸たぐり屋』だったんじゃ。
最初は知り合いにさくらを頼んで、恋人が出来たと吹聴してもらった。
そしたら、わしの所へ糸たぐりをたのみに来るやつらが一気に増えたんじゃ。
ある程度の金が集まったら、この町から逃げるつもりじゃったんじゃが、不思議なことに本当にそれから「恋人が出来た」「結婚した」って者が続いてしまったんじゃ。
わしがやったことと言ったら、いいかげんな呪文を唱えながらこうやって糸をたぐる真似をすることだけだったんじゃが、わしに依頼をしてくる奴らは皆真剣でな。
わしが『もうじきだ!もう、すぐ近くまで来てるぞ!』と言うと、その人に会った時のためにと着るものや化粧を綺麗にするようになってな。
その時は気付かんかったが、後から思えば結局はああいう努力が異性を引き寄せることになったんじゃないかと思うんじゃ。」
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