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014. 高級マツタケ
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*
「けっ!なんて町だ!」
ケンタロウは、固い蹄で地面を踏み鳴らした。
やはり僕の思った通りだった。
この町は、獣人には市場を貸さないそうだ。
今でもごくたまにそういう町がある。
たいていは獣人の少ない地域だ。
ロッシーだけならともかく、僕やケンタロウみたいな種族がいたせいなのか、人間の態度は本当に冷たいものだった。
ロッシーはそれでもしばらく責任者と話していて、そして戻って来ると子供達に木の札を差し出した。
「これで一ヶ月は店が出せるからな。
頑張るんやで。
それと…君らにこれあげるわ。」
そう言って、ロッシーはケンタロウの背中からきのこのかごを降ろした。
「これは、珍しいきのこやから高くで売れるはずや。
売れたお金で、お母ちゃんになにかおいしいもんでも買うてあげ。」
*
「おい、良かったのか?
あんなに気前良くやっちまって。」
「かめへん、かめへん。
どうせわてらはここの市場では商売出来へんのやし、先の町に行くまでに鮮度が下がったらもったいないしな。」
「でも、せっかく苦労してあんな山ん中から採って来たのに…」
「ちょっとでもあの子らのためになったらそれでええやんか。
骨折やったらもうしばらくかかるやろし、少しでも足しになったらそんでええやん。」
ロッシーは普段はとっても細かいんだけどこういう時は本当に太っ腹だ。
僕だったらあげるとしても半分だけかもしれない。
「ま、そうだけど…
あのきのこがもしも普通のきのこの三倍で売れるとしたら…
贅沢しなきゃ、二、三週間は暮らせるか…
その間におふくろさんがまた働けるようになりゃ良いけどな…」
なんだかんだ言っても、ケンタロウも子供達のことを心配はしてるんだ。
こんなことになるのなら、昨夜、もっと食べとけば良かったなんてふといじましいことを考えた僕はやっぱり駄目な奴だ。
僕らは町を後にした。
しばらくは獣人に冷たい町が続くかもしれないけど、そんなことはもう慣れっこだ。
それに、今の僕は一人じゃないんだから。
*****
あのきのこが、親子がゆうに一年は暮らせる程の高値で売れたことを、とかやん達はもちろん知らない。
「けっ!なんて町だ!」
ケンタロウは、固い蹄で地面を踏み鳴らした。
やはり僕の思った通りだった。
この町は、獣人には市場を貸さないそうだ。
今でもごくたまにそういう町がある。
たいていは獣人の少ない地域だ。
ロッシーだけならともかく、僕やケンタロウみたいな種族がいたせいなのか、人間の態度は本当に冷たいものだった。
ロッシーはそれでもしばらく責任者と話していて、そして戻って来ると子供達に木の札を差し出した。
「これで一ヶ月は店が出せるからな。
頑張るんやで。
それと…君らにこれあげるわ。」
そう言って、ロッシーはケンタロウの背中からきのこのかごを降ろした。
「これは、珍しいきのこやから高くで売れるはずや。
売れたお金で、お母ちゃんになにかおいしいもんでも買うてあげ。」
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「おい、良かったのか?
あんなに気前良くやっちまって。」
「かめへん、かめへん。
どうせわてらはここの市場では商売出来へんのやし、先の町に行くまでに鮮度が下がったらもったいないしな。」
「でも、せっかく苦労してあんな山ん中から採って来たのに…」
「ちょっとでもあの子らのためになったらそれでええやんか。
骨折やったらもうしばらくかかるやろし、少しでも足しになったらそんでええやん。」
ロッシーは普段はとっても細かいんだけどこういう時は本当に太っ腹だ。
僕だったらあげるとしても半分だけかもしれない。
「ま、そうだけど…
あのきのこがもしも普通のきのこの三倍で売れるとしたら…
贅沢しなきゃ、二、三週間は暮らせるか…
その間におふくろさんがまた働けるようになりゃ良いけどな…」
なんだかんだ言っても、ケンタロウも子供達のことを心配はしてるんだ。
こんなことになるのなら、昨夜、もっと食べとけば良かったなんてふといじましいことを考えた僕はやっぱり駄目な奴だ。
僕らは町を後にした。
しばらくは獣人に冷たい町が続くかもしれないけど、そんなことはもう慣れっこだ。
それに、今の僕は一人じゃないんだから。
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あのきのこが、親子がゆうに一年は暮らせる程の高値で売れたことを、とかやん達はもちろん知らない。
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