337 / 697
050. 過去・現在・未来
5
しおりを挟む
安宿に入ったビリーは、粗末な硬いベッドに横になりカードをみつめる。
(ジュディと別れるにはどうすれば良い?
ジュディにつきあってくれと言われた日か…?
馬鹿な…それがいつだったかなんて正確な日付けなど覚えているはずがない。
じゃあ、いつだ?
結婚した日か?
いや、それじゃあダメだ。
あの女のことだ。
簡単に諦めるとは思えねぇ。
しつこくつきまとわれてその日じゃない日に結婚することになるかもしれない。
ならいつだ?
……そうだ!
ジュディと知り合わなければ良いんだ。
端からあいつと知り合ってさえいなければ、結婚することだってありえない。
でも、そうするためには、いつのどんな出来事をやり直せば…?)
ビリーは、過去に想いを馳せた。
とても幸せだとは思えないろくでもない過去…
なぜ、自分はこんなことになってしまったのかを考えた。
(そうだ、母さんがあんなろなくでなしと再婚さえしなければ…)
ビリーが、10歳の時に母親は再婚した。
実の父親は、甲斐性こそなかったが家族には優しい父親だった。
そんな父親はビリーが5歳の時に、馬車にひかれてあっけなく死んでしまった。
元々裕福ではなかった生活がさらに苦しくなった。
ビリーを育てるため、やがて母は夜は酒場で働くようになり、そこでロイスに出会い再婚した。
ロイスは酒癖が悪く、母親やビリーに毎晩のように酷い暴力を奮った。
それが原因でビリーはぐれた。
札付きの不良と呼ばれるようになってしまった。
ジュディと知り合ったあの町に引っ越したのも、再婚相手がそう望んだからだった。
(そうだ…あの再婚がなければもっとまともな人生を送れてたに違いない。
母親の再婚した日は覚えている。
誕生日が結婚記念日だから忘れないとよく言ってたから。
そういえば、俺はあの頃、母さんがロイスなんかじゃなくてマイケルさんと結婚すれば良いと思っていたっけ…マイケルさんは俺にもいつも優しくしてくれた。
そうだ!そうなっていれば、俺達は皆、幸せになれたんだ!)
マイケルとは、近所に住む仕立て屋の主人で、妻とは折り合いが悪く、よく実家に戻っていたようだ。
妻はいかにも神経質そうでとっつきも悪かったため、幼いビリーは言葉を交わした事もほとんどなかったが、主人のマイケルの方はビリーの家庭の事情を知っていたのか、お菓子を買ってくれたり、遊んでくれることもあった。
いつも穏やかで声を荒げるようなことのない物静かな男で、それがどことなくビリーに実の父親を思い出させていたのかもしれない。
ビリーは、カードに母親が再婚した日付を書き入れた。
「母さんがロイスではなくマイケルさんと再婚する。」
ビリーは、書いたカードを見て微笑んだ。
こんなカードで過去が変えられるはずがない。
過去をやり直すなんて誰にも出来ないこと…それがわかっているからこそ、人はそんなことを空想してしまうのかもしれない。
現在の状況が良くなければ良くない程…過去のせいにしたがるのだ。
「あの時、こうしていなければ…」
そんなつまらないことを考えてしまうのだ。
ビリーは、そんなとりとめのない物思いに浸りながら、カードを枕の下にそっと滑りこませた。
(良い夢くらいは見られるかもしれないな…)
ベッドの上で小瓶の酒を飲み、やがてビリーはいつの間にか眠りに落ちていた。
(ジュディと別れるにはどうすれば良い?
ジュディにつきあってくれと言われた日か…?
馬鹿な…それがいつだったかなんて正確な日付けなど覚えているはずがない。
じゃあ、いつだ?
結婚した日か?
いや、それじゃあダメだ。
あの女のことだ。
簡単に諦めるとは思えねぇ。
しつこくつきまとわれてその日じゃない日に結婚することになるかもしれない。
ならいつだ?
……そうだ!
ジュディと知り合わなければ良いんだ。
端からあいつと知り合ってさえいなければ、結婚することだってありえない。
でも、そうするためには、いつのどんな出来事をやり直せば…?)
ビリーは、過去に想いを馳せた。
とても幸せだとは思えないろくでもない過去…
なぜ、自分はこんなことになってしまったのかを考えた。
(そうだ、母さんがあんなろなくでなしと再婚さえしなければ…)
ビリーが、10歳の時に母親は再婚した。
実の父親は、甲斐性こそなかったが家族には優しい父親だった。
そんな父親はビリーが5歳の時に、馬車にひかれてあっけなく死んでしまった。
元々裕福ではなかった生活がさらに苦しくなった。
ビリーを育てるため、やがて母は夜は酒場で働くようになり、そこでロイスに出会い再婚した。
ロイスは酒癖が悪く、母親やビリーに毎晩のように酷い暴力を奮った。
それが原因でビリーはぐれた。
札付きの不良と呼ばれるようになってしまった。
ジュディと知り合ったあの町に引っ越したのも、再婚相手がそう望んだからだった。
(そうだ…あの再婚がなければもっとまともな人生を送れてたに違いない。
母親の再婚した日は覚えている。
誕生日が結婚記念日だから忘れないとよく言ってたから。
そういえば、俺はあの頃、母さんがロイスなんかじゃなくてマイケルさんと結婚すれば良いと思っていたっけ…マイケルさんは俺にもいつも優しくしてくれた。
そうだ!そうなっていれば、俺達は皆、幸せになれたんだ!)
マイケルとは、近所に住む仕立て屋の主人で、妻とは折り合いが悪く、よく実家に戻っていたようだ。
妻はいかにも神経質そうでとっつきも悪かったため、幼いビリーは言葉を交わした事もほとんどなかったが、主人のマイケルの方はビリーの家庭の事情を知っていたのか、お菓子を買ってくれたり、遊んでくれることもあった。
いつも穏やかで声を荒げるようなことのない物静かな男で、それがどことなくビリーに実の父親を思い出させていたのかもしれない。
ビリーは、カードに母親が再婚した日付を書き入れた。
「母さんがロイスではなくマイケルさんと再婚する。」
ビリーは、書いたカードを見て微笑んだ。
こんなカードで過去が変えられるはずがない。
過去をやり直すなんて誰にも出来ないこと…それがわかっているからこそ、人はそんなことを空想してしまうのかもしれない。
現在の状況が良くなければ良くない程…過去のせいにしたがるのだ。
「あの時、こうしていなければ…」
そんなつまらないことを考えてしまうのだ。
ビリーは、そんなとりとめのない物思いに浸りながら、カードを枕の下にそっと滑りこませた。
(良い夢くらいは見られるかもしれないな…)
ベッドの上で小瓶の酒を飲み、やがてビリーはいつの間にか眠りに落ちていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
不倫妻への鎮魂歌 ―サレ夫が選んだ、最も残酷で静かな復讐―
MisakiNonagase
大衆娯楽
「サレ夫、再生。不倫妻、転落。──その代償は、あまりに重い。」
「嘘で塗り固めた20年より、真実で歩む明日がいい。」
失って初めて気づく、守られていた日々の輝き。
46歳の美香にとって、誠実な夫と二人の息子に囲まれた生活は、退屈で窮屈な「檻」だった。若い男からの甘い誘惑に、彼女は20年の歳月を投げ打って飛び込んだ。 しかし、彼女が捨てたのは「檻」ではなく「聖域」だったのだ。 不倫、発覚、離婚、そして孤独。 かつての「美しい奥様」が、厚化粧で場末のスナックのカウンターに立つまでの足取りと、傷つきながらも真実の幸福を掴み取っていく夫・徹の再生を描く。 家族とは何か、誠実さとは何か。一通の離婚届が、二人の人生を光と影に分かつ。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる