Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

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056. 春雷

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「あぁ、私はさっき飲んできたから、そいつは婆さんにあげるよ。」

「ありがとうよ。」

老婆は、バーボンの小瓶をぐいっとあおる。



「う~ん、身体を温めるにはこれが一番だね!」

「そうだね。」

ジェシカは老婆に微笑み返した。



しばらくすると、老婆がおかしなことを言い始めた。



「南じゃ…」

「え?何が?」

「あんたの探しとるもんは南にある。」

「私…東の町に行くつもりなんだけど…」

「いいや!南じゃ!
南の町…雷…そうじゃ!
雷じゃ!」

「雷??」



そう言うと、老婆はそのままテーブルに突っ伏して眠り始めた。



「あ~あ、婆さん、そんなとこで寝ちまって…」

ジェシカは老婆を長椅子に寝かせ、その上から毛布をかけた。







次の朝、ジェシカが目覚めると老婆はもう部屋にはいなかった。

なんでも、夜明け前に出て行ったという。



(おかしな婆さんだったなぁ…)



テーブルの上に置かれたバーボンの小瓶を見た時、何かを思い出しそうな気がしたが、結局はそれが何なのかわからなかった。


軽い朝食を採った後、ジェシカは宿を発った。



町を出ようとした時にふと昨夜の婆さんの言葉が頭をかすめた。



「南じゃ…!!」



(……南の町にお宝の噂なんて聞いたことがない。
やっぱり、予定通り、あの町に行こう!)


そう考えて歩き出したのだが、やはりどうも気にかかる。



(ま、いいか。少しくらい回り道しても…)



ジェシカはひき返し、南へ向かって歩き出した。
しかし、南と言われてもどこへ行けば良いというのか?
具体的な目的地はまるでわからない。
あんないんちき婆さんの言うことを真に受けるなんて、馬鹿馬鹿しい話だ…
やっぱり東の町にいくべきではないだろうか?

悩みながらも、ジェシカはそのまま南に歩き続けていた。



隣町へは思ったよりも遠く、辿りついたのはもう夕暮れ時だった。
早速、ジェシカは宿に入り、食事をしながらこのあたりの町のことを聞いてみた。
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