Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

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060. 犬狼星(シリウス)

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「ううっ、寒っ…」

見上げると、白いものが空からちらほらと落ちてきている。
まるで、降ろうかやっぱりやめとこうかと迷っているような白い雪…



(おまえもまだ決心が付かないのか…)



俺がしばらく空を見上げていると、雪は「やっぱり降るのはやめた」と言わんばかりに見えなくなった。



(……意地悪だな…)



こんな日くらい降ってくれれば良いものを…
俺は、心の中で少し愚痴りながら、人気のない道を歩き始めた。









明確な理由があるわけではない…
死にたいと思ったわけでもない…
ただ、息が詰まっていた。
自分の未来が見えなくて、明日のことさえ考えられなくて、衝動的に家を出てしまった。

一応、家には「旅行に行って来る」との書き置きを残してきた。
俺と本当に血が繋がってるのかと疑いたくなるような楽天的な両親だから、そこに書いてある言葉以上のことは考えないだろう。
俺が、もしかしたらここへは一生戻らないかもしれないという決意で出たことなんて知るはずもない。
一ヶ月程帰らなければ少しは心配するだろうか?
いや、あの両親なら、半年くらい経たないとおかしいと感じないかもしれないな…
その時、俺がいるのはこの世なのか、それともこの世ではない場所なのか…

そんなとりとめのないことを考えながら、俺は息が白く煙る寒い道を歩き続けた。
目的の場所があるわけではない。
ただ…こんな寒い季節だから、もっと寒い所へ行きたいと思った。
とことん寒くて、凍えるような場所へ…
漠然とそんなイメージを頭に描いて、俺は適当に電車を乗り継ぎ、なんとなく気が向いた駅で降りた。
降りる乗客さえまばらなその駅は、降りた途端に家の近所とは寒さが違うことに気が付いた。

駅舎を出て、俺は山を目指すことにした。
それはただ単に、山が最初に目に付いたから。
まだ夜が明けきらないうちに家を出て来たというのに、その頃にはあたりは薄暗くなっていた。
日の暮れの空には黒いカラスが飛び交っていた。
きっと、このあたりの子供達は、こんな景色を見て家路についたのではないだろうか。
昔話の1シーンに出て来そうな風景だ。




歩いているうちにカラス達も巣に戻り、帰る場所のない俺だけがただただ山を目指して歩いていた…
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