Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

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070. 光りさす庭

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明確な目標があるのとないのとでは、心の張りがこんなにも違うのかとタイラーは自分の心境の変化に驚いていた。
タイラーの心は澄みきり、一抹の不安も迷いさえもなくなっていた。
ただ、願いの番人をみつけることだけを考えて、洞窟の中を歩き回った。
ところが、その想いとは裏腹に、あれだけ持って来ていた食料がついに底を着いた。
幸い、水はみつけることが出来たが、水だけでどれだけもつものか…

タイラーは、身体が弱って来ていることは十分に感じていた。
ほんの少しの移動でも息が切れる。
食料がなくなって何日かした後に、タイラーは目に明るいものを感じた。
無意識に光の方に引き寄せられる。
ついに幻覚を見るようになったかと、自嘲気味に微笑みながら、タイラーは歩いていく…
一歩、歩を進めるごとに明るさは増しているように思えた。



「ここは……」

今までの洞窟が嘘か幻だったかのように拓けた場所に出た。
頭上遥かにはぽっかりと大きな穴が開き、そこからは明るい日差しが差しこんでいる。

この洞窟の周りは樹海の筈…なぜ、こんなにも陽の当たる場所があるのか、タイラーにはわからなかった。

どこからかタイラーの傍に一人の男がゆっくりと歩み寄って来る。



「あ…あんたは…、まさか…!!」

男はにっこりと微笑んだ。



「あなたの望みは?」

「お…俺の願い事は…」

その時、タイラーは気が付いた。
「皆、同じ願い事をする」というその意味に…



「……そうか…そういうことだったのか…」

男は黙ったまま、タイラーの方を見て頷いた。



「あなたもその望みでよろしいですね…」

「……いや…俺の望みは違う…
俺はここから出られなくて良いんだ。
そんなことよりも…どうか、ダグラスの息子の病気を治して欲しい。」

「良いのですか?
それを叶えてしまったら、あなたはもうここからは二度と出られないのですよ。
つまりあなたの死を意味することになりますが…」

「だろうな…でも、良いさ。
奴は俺のために死んじまったんだからな。
あんなことがなけりゃあいつは…」

タイラーは唇を噛み締めた。



「わかりました。」

男は、目を瞑った。
その姿は何かを瞑想しているように見えた。



「あなたの願いは叶えられました。

「ほ、本当か?!」

男は、静かに微笑みながら頷いた。
タイラーには、男の言葉を確かめる術はない。
そもそも、今、自分が目にしているこの光景が真実なのか幻なのかもわからない。

だが、その男の言葉は真実だと、タイラーは直感的にそう感じた。

 
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