524 / 697
074. 盗賊
4
しおりを挟む
「旦那様、どういうことなんです?」
「ネイサン…私とこの男の顔を良く見てみたまえ。」
「え…?」
ネイサンは、男とアレンの顔を交互に見比べた。
「非常に良く似てらっしゃる…
ご親族ですか?」
アレンはゆっくりと首を振った。
「この男は…私だ。」
「……今、なんと?
一体、どういうことです?」
「……この男は若い頃の私だ。」
「えっ!?そ、そんな馬鹿な…!」
アレンは大きな溜め息を吐き出した。
「私は若い頃、ある貴族の娘に恋をした。
一目惚れだった。
だが、貧しく、何の取柄もない私に、その娘が振り向いてくれるはずがない。
諦めかけていた時、私はふとした偶然からある魔法使いを助けた。
その魔法使いはとても義理堅い者で、私に助けを申し出てくれたんだ。
魔法使いは、私に魔法の肖像画をくれた。
金持ちになった未来の私の肖像画をな。
そして、将来、その娘と結婚し、金持ちになったら、若い頃の私の肖像画を描かせて、屋敷に飾るように言われたんだ。」
「まだ俺には意味が良くわかりませんが…」
ネイサンがそう言うと、今度は若い男が口を開いた。
「ある時…未来の肖像画が光り輝いていた。
どうしたんだろうと近付いてみたら、俺は、その絵に吸い込まれ、気が付いたらどこかの大きな屋敷にいたんだ。
そう、つまり、この屋敷だ。
俺はこの屋敷から宝石や金を盗み、それで彼女の気を引いた。
屋敷の外は見張りでいっぱいだが、まさか俺が屋敷の中に飾られてる絵の中から出て来てると気付く奴はいなかったから、本当に楽だった。
しかも、その甲斐あって、彼女はずいぶんと俺になびいて来た。
きっと、俺は近々彼女と結婚出来るだろう。」
「それは間違いない。
すでに、こうして私は彼女と結婚しているのだから。
しかし、なんということだろう…
私は昔のことをこんなにもすっかり忘れていたとは…」
ネイサンは困惑した顔で、二人の会話を聞いていた。
「ややこしいけど…えっと…つまり…
お二人は、同一人物…ということですか?」
「その通りだ。
ネイサン…どうか、今回のことは誰にも話さないでほしい。」
「は、はい、わかりました。」
その後、アレンの屋敷に泥棒が現れることはぴたりとなくなった。
その理由を知るのは、アレンとネイサンだけである…
「ネイサン…私とこの男の顔を良く見てみたまえ。」
「え…?」
ネイサンは、男とアレンの顔を交互に見比べた。
「非常に良く似てらっしゃる…
ご親族ですか?」
アレンはゆっくりと首を振った。
「この男は…私だ。」
「……今、なんと?
一体、どういうことです?」
「……この男は若い頃の私だ。」
「えっ!?そ、そんな馬鹿な…!」
アレンは大きな溜め息を吐き出した。
「私は若い頃、ある貴族の娘に恋をした。
一目惚れだった。
だが、貧しく、何の取柄もない私に、その娘が振り向いてくれるはずがない。
諦めかけていた時、私はふとした偶然からある魔法使いを助けた。
その魔法使いはとても義理堅い者で、私に助けを申し出てくれたんだ。
魔法使いは、私に魔法の肖像画をくれた。
金持ちになった未来の私の肖像画をな。
そして、将来、その娘と結婚し、金持ちになったら、若い頃の私の肖像画を描かせて、屋敷に飾るように言われたんだ。」
「まだ俺には意味が良くわかりませんが…」
ネイサンがそう言うと、今度は若い男が口を開いた。
「ある時…未来の肖像画が光り輝いていた。
どうしたんだろうと近付いてみたら、俺は、その絵に吸い込まれ、気が付いたらどこかの大きな屋敷にいたんだ。
そう、つまり、この屋敷だ。
俺はこの屋敷から宝石や金を盗み、それで彼女の気を引いた。
屋敷の外は見張りでいっぱいだが、まさか俺が屋敷の中に飾られてる絵の中から出て来てると気付く奴はいなかったから、本当に楽だった。
しかも、その甲斐あって、彼女はずいぶんと俺になびいて来た。
きっと、俺は近々彼女と結婚出来るだろう。」
「それは間違いない。
すでに、こうして私は彼女と結婚しているのだから。
しかし、なんということだろう…
私は昔のことをこんなにもすっかり忘れていたとは…」
ネイサンは困惑した顔で、二人の会話を聞いていた。
「ややこしいけど…えっと…つまり…
お二人は、同一人物…ということですか?」
「その通りだ。
ネイサン…どうか、今回のことは誰にも話さないでほしい。」
「は、はい、わかりました。」
その後、アレンの屋敷に泥棒が現れることはぴたりとなくなった。
その理由を知るのは、アレンとネイサンだけである…
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ガチャから始まる錬金ライフ
あに
ファンタジー
河地夜人は日雇い労働者だったが、スキルボールを手に入れた翌日にクビになってしまう。
手に入れたスキルボールは『ガチャ』そこから『鑑定』『錬金術』と手に入れて、今までダンジョンの宝箱しか出なかったポーションなどを冒険者御用達の『プライド』に売り、億万長者になっていく。
他にもS級冒険者と出会い、自らもS級に上り詰める。
どんどん仲間も増え、自らはダンジョンには行かず錬金術で飯を食う。
自身の本当のジョブが召喚士だったので、召喚した相棒のテンとまったり、時には冒険し成長していく。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる