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ルカ(聖夜月ルカ)

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076. 野望

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「かたじけない。
ご老人のご親切には本当に感謝しております。
このご恩、某は一生忘れませんぞ。」

デザートの杏仁豆腐を食べ終えた胡燕は、李雲に向き直り、深深と頭を下げた。

キラッ!
その言葉を聞いた李雲の瞳が妖しく光る…



「頭をお上げ下さい。
そんなに喜んでいただけたら、こちらこそ恐縮してしまいます。
私はただこの国のために一生懸命働いておられる軍人さんにおいしいものを食べていただきたかっただけ…ただそれだけなのですが、あなた様のような真面目で義理堅いお方はそういうわけにもいきますまい。
何もせずに、あんな高級料理をたらふく食べさせられたのでは気になって仕方がない…
そうでしょう、そうでしょうとも!
何もおっしゃらずともこの爺にはわかります。
私は何の下心もなかったのですが、こうなったら仕方がありません!
あなた様のお心を軽くするために、無理に何かしていただくことを考えましょう。
う~ん、う~ん、う~ん、これは困った…う~ん、う~ん…」

勝手にどんどん進行する、誰が見ても不自然な猿芝居にも気付かず、胡燕は何も考えられないまま李雲のワンマンショーを見つめていた。



「そうだ!!」

わざとらしさ全開で、李雲は手を打った。



「そういえば、近々開催されるイケメンコンテストの出場者が少ないと、主催者が困っていたのを思い出したぞ。
コンテストが盛りあがらないと町興しにもならないから、この軍人さんにはそれに出場してもらうことをお願いしてみよう!」

あまりにも棒読みな独り言を呟いた李雲は、胡燕の方に向き直る。



「実は…今、思い出したのですが…」

「ご老人、イケメンコンテストとは、一体何なのですか?」

「胡燕殿、なぜ、そのことを…?
そうか、私は知らないうちに独り言を言っていたのですな。
胡燕殿、イケメンとは容姿端麗な男性のことを言うのです。」

「容姿端麗…そんなコンテストに某のような者が出場出来るわけが…」

「何をおっしゃいます!
あなた様はとてもかっこいいですぞ!
それに、問題は出場者が少ないということなのです。
優勝がどうとか優勝特典の女人島ご招待がどうとか言っておるのではありません!」

「にょ…女人島?」

「い、いえ、なんでもございません。
とにかく、コンテスト当日までに、あなた様には私がスぺシャリストの手を借りて最善を尽くさせていただきます。
あなたは、ただ、その者達の言うことを聞いておけば良いのです。
もちろん…!!……食事は毎食あなた様のお好きなものをご用意させていただきます…」

最後のその言葉に、胡燕は無意識に頷いていた。

 
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