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ルカ(聖夜月ルカ)

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083. 幻想の草原

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 「ルークさんは今のお話をどう思われましたか?」

「どうって…そ、そりゃあ大変だなぁって…」

ランスロットの顔を見て、奴がそんな答えを期待していなかったことははっきりわかったけど、かといってどう答えれば良いのかは俺にはわかっていなかった。
なにしろ、エルフのジーニアスの話はとても衝撃的な内容だったのだから。

ジーニアスの話によると、あの笛は小人の村への扉を開くものではないらしい。
そもそも、エルフと小人達はその姿はずいぶん違うものの、源になるものは近く、言ってみれば親戚のような関係にあるらしい。
親戚っていうのは人間でもそうだけど、身内だからこそ難しいって関係でもある。
小人達っていうのはなにしろ悪戯好きで、それが度を越して周りに酷い迷惑をかける事もしばしばあるらしく、そんな時には決まってエルフが小人をたしなめるようにしていたらしい。
ある時、小人の悪戯のせいで人間の村が火事になったことがあったのだという。
幸い死者は出なかったものの、それはさすがに叱るだけで済むような悪戯ではない。
エルフの長は、小人達への戒めのため、小人の村の入口に結界を張り、一定の間、小人達が外へ出られないようにした。
結界の開かれた時、小人達はエルフの長とジーニアスを招き、宴を催した。
宴席で、小人達はこれからは心を入れ替え、酷い悪戯はしないと誓ったが、それは罠だった。
エルフの長に小人達は眠りの呪いをかけたのだという。
小人達は反省するどころか、エルフ達を逆恨みするようになってたんだな。
そして、その長を眠りから覚ますのが、砂の城に隠されていた目覚めの笛だということだった。



「ジーニアスさん、お話はよくわかりました。
あなたが嘘を吐いてらっしゃるようには思えませんが、ただ、わからないのは、なぜあなたはすぐに私達に接触されなかったかということです。
あなたなら、私達に話をしなくとも奪おうと思えばいつでも笛を奪えたのではありませんか?
なのになぜ…」

俺はランスロットの話を聞きながら、自分でも気付かないままに何度も頷いていた。
確かにそうだ。
エルフについて詳しく知ってるわけじゃあないが、人間にはない能力を持っていると聞く。
砂の城には入れなかったにしろ、それを持ち出した後ならいつだって奪えた筈だもんな。
ランスロットは普段はけっこうぼーっとしてるようなのに、こういう所は本当に鋭いと、改めて俺は感心していた。



「あなたの疑問はごもっともです。
まず、私達は元々争いを好まぬ性質だということ。
争わずとも取れますが、そういう泥棒のような真似はあまりしたくはなかったのです。
ですから、出来るなら正直に話して理解していただきたかったのと、それと…」

流暢に話していたジーニアスが不意に言葉を濁した。
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