Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
603 / 697
086. 途方に暮れる

しおりを挟む
「真澄さん!来たのねん!」

朝まで張りこんだ三人は、真澄さんが家を出なかったことで心底安堵し、晴れ晴れしい顔で真澄さんの家を訪れた。



「よく来たね。さぁ、入りたまえ!」

部屋の中には美しい花があちこちに飾られ、テーブルにはおいしそうな中華料理が並べられていた。



「うわぁ、おいしそうなのねん!」

「じゃあ、まずは乾杯だな!」

真澄さんがいかにも高級そうなシャンパンを持ち、その栓が景気の良い音と共に飛び跳ねた。



「メリー、誕生日おめでとう!」

「おめでとう!!」

乾杯が済むと、不意に部屋の明かりが消えた。



「どうしたのん?停電?」

「あれ?真澄さんは?」

「おかしいな…どうなったんだ?」

三人が、突然の停電に戸惑っていると、鼻をつく強烈な異臭と共にゆらゆら揺れるいくつかの明かりが部屋の中に入って来た。



「メリー、ハッピーバースディ!
これは、僕からのプレゼント。
手作りのバースディケーキだ!
さぁ、願い事をしながら蝋燭の炎を吹き消してくれたまえ!」

「うっ、げ、げほっっ!」

あまりの異臭に咳き込みながら、メリーは炎を吹き消した。
それと同時に、真澄さんが部屋の明かりのスイッチを入れ、三人の目に世にも恐ろしいバースディケーキが映し出された。
三人の全身が凍りつく。



「君が、昨夜食材をぶちまけたから、こんなシンプルなものになってしまったよ。」

真澄さんはそう言って苦笑いを浮かべた。



「ま…真澄さん、これって納豆なのねん?」

真っ白な生クリームのケーキの上に敷き詰められた茶色い粒粒…
それはどう見ても納豆だった。



「そうさ。本当はもっといろんなものをトッピングするつもりだったのに…」

そう言うと、真澄さんは悲しそうな顔をしてケーキをみつめた。



「なんか、納豆以外の臭いがするのは、俺の気のせいなのん?」

「あぁ、それなら、シュールストレミングだ。
ちょうどスウェーデンから取り寄せたものが家にあったから助かったよ。
さぁ、皆、遠慮しないで食べてくれ。」

真澄さんがケーキを切り分ける度に異臭はさらに激しさを増す…
メリーは、ついさっき蝋燭を吹き消す時に言った願い事を今一度呟いた。



(どうか、このケーキを食べずにすみますように…!!)







だが、メリーのその願いは叶う事はなかった…

その後の三人の運命は…言うまでもない…



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ガチャから始まる錬金ライフ

あに
ファンタジー
河地夜人は日雇い労働者だったが、スキルボールを手に入れた翌日にクビになってしまう。 手に入れたスキルボールは『ガチャ』そこから『鑑定』『錬金術』と手に入れて、今までダンジョンの宝箱しか出なかったポーションなどを冒険者御用達の『プライド』に売り、億万長者になっていく。 他にもS級冒険者と出会い、自らもS級に上り詰める。 どんどん仲間も増え、自らはダンジョンには行かず錬金術で飯を食う。 自身の本当のジョブが召喚士だったので、召喚した相棒のテンとまったり、時には冒険し成長していく。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

処理中です...