Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

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089. 寄り道

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 「これだけ採れば大丈夫だわ。」

リラは、明るい笑顔を浮かべた。



 魔の森には、イザベラの言う通り、本当にいちごが実っていた。
 村に実るいちごとは大きさも格段に違い、みずみずしく、甘い香りのする素晴らしいいちごだった。
リラは、そのいちごをかごいっぱいに集めた。



 「あの言い伝えはデマだったみたいだね。
 魔物なんてどこにもいない。」

 「本当ね、そんな言い伝えに今まで躍らされていたなんて、なんだか悔しいわね。」

そんな会話を交わしながら、ふたりが森の出口に向かっていた時…
唐突に、低いうなり声が響き渡った。



 「ガブリエル…声が…」

 「そうだね…あっ!」


ふたりの前に、無数の狼たちが姿を現した。
 狼たちは、鋭い牙をむき出し、ふたりを睨みつける。



 「ガブリエル…!」

 「リラ、僕の後ろに…!」



 『この森のものはすべて主のもの。
それなのに、おまえたちはいちごを盗んだ。
おまえたちは、泥棒だ。
よって、おまえたちを征伐する!』



 「えっ!?」

 二人は同時に声を上げた。



 「ガブリエル…今、声が…」

 「あぁ、聞こえたよ!直接、頭の中に響くようだった。」

 「このいちごは採っちゃいけないものだったんだわ!」

 「そうだね。とにかく、そのいちごを置いて逃げよう!」



 駆けだしたふたりの後を、狼の群れが追いかける。



 「待って!」

 狼を射ようと弓を構えたガブリエルを、リラが制した。



 「悪いことをしたのは私なの。
だから、狼を殺さないで!」

 「わかったよ!」



ガブリエルは、狼を傷付けないように威嚇の弓を放ちながら、走り続けた。
だが、やがて弓矢も尽き、狼の群れはふたりのすぐ近くに追いついた。



 「もうだめだわ…
ガブリエル…ごめんなさい。
 私のせいで、あなたをこんな目に遭わせて…」

 「気にすることはないよ。
 僕は自分の意志でここに来たんだ。
 君のせいじゃない。」

ふたりは恐怖に身を固くして、強く抱き合った。

 
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