Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
621 / 697
089. 寄り道

しおりを挟む




 「これだけ採れば大丈夫だわ。」

リラは、明るい笑顔を浮かべた。



 魔の森には、イザベラの言う通り、本当にいちごが実っていた。
 村に実るいちごとは大きさも格段に違い、みずみずしく、甘い香りのする素晴らしいいちごだった。
リラは、そのいちごをかごいっぱいに集めた。



 「あの言い伝えはデマだったみたいだね。
 魔物なんてどこにもいない。」

 「本当ね、そんな言い伝えに今まで躍らされていたなんて、なんだか悔しいわね。」

そんな会話を交わしながら、ふたりが森の出口に向かっていた時…
唐突に、低いうなり声が響き渡った。



 「ガブリエル…声が…」

 「そうだね…あっ!」


ふたりの前に、無数の狼たちが姿を現した。
 狼たちは、鋭い牙をむき出し、ふたりを睨みつける。



 「ガブリエル…!」

 「リラ、僕の後ろに…!」



 『この森のものはすべて主のもの。
それなのに、おまえたちはいちごを盗んだ。
おまえたちは、泥棒だ。
よって、おまえたちを征伐する!』



 「えっ!?」

 二人は同時に声を上げた。



 「ガブリエル…今、声が…」

 「あぁ、聞こえたよ!直接、頭の中に響くようだった。」

 「このいちごは採っちゃいけないものだったんだわ!」

 「そうだね。とにかく、そのいちごを置いて逃げよう!」



 駆けだしたふたりの後を、狼の群れが追いかける。



 「待って!」

 狼を射ようと弓を構えたガブリエルを、リラが制した。



 「悪いことをしたのは私なの。
だから、狼を殺さないで!」

 「わかったよ!」



ガブリエルは、狼を傷付けないように威嚇の弓を放ちながら、走り続けた。
だが、やがて弓矢も尽き、狼の群れはふたりのすぐ近くに追いついた。



 「もうだめだわ…
ガブリエル…ごめんなさい。
 私のせいで、あなたをこんな目に遭わせて…」

 「気にすることはないよ。
 僕は自分の意志でここに来たんだ。
 君のせいじゃない。」

ふたりは恐怖に身を固くして、強く抱き合った。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

不倫妻への鎮魂歌 ―サレ夫が選んだ、最も残酷で静かな復讐―

MisakiNonagase
大衆娯楽
「サレ夫、再生。不倫妻、転落。──その代償は、あまりに重い。」 「嘘で塗り固めた20年より、真実で歩む明日がいい。」 失って初めて気づく、守られていた日々の輝き。 46歳の美香にとって、誠実な夫と二人の息子に囲まれた生活は、退屈で窮屈な「檻」だった。若い男からの甘い誘惑に、彼女は20年の歳月を投げ打って飛び込んだ。 しかし、彼女が捨てたのは「檻」ではなく「聖域」だったのだ。 不倫、発覚、離婚、そして孤独。 かつての「美しい奥様」が、厚化粧で場末のスナックのカウンターに立つまでの足取りと、傷つきながらも真実の幸福を掴み取っていく夫・徹の再生を描く。 家族とは何か、誠実さとは何か。一通の離婚届が、二人の人生を光と影に分かつ。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

処理中です...