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090. 一千年
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*
「ジョッシュ!今度の休み、皆でハイキングに行かないか?」
「ハイキング?そういえば、ここんとこ、どこにも行ってなかったな。
うん、行こう!」
あれから、どれほどの時が流れたのか、もはや僕にはわからない。
とにかくあの頃とはまるで違う時代になった。
悩み、戸惑い…発狂してしまうのではないかと思った時期もあったけど、ようやく僕は落ち着きを取り戻し、最近はけっこう楽しく生きている。
心の中の大きな悩みが消えたわけではないけれど、長い時を過ごす中で、僕もようやく悟ったのかもしれない。
僕は、この時代のごくありきたりな16歳を演じている。
数えきれない程の嘘を吐き、どうにか体裁を繕って…
相変わらず、一所には長くはいられない生活だが、そんな暮らしにももう慣れた。
*
「ボブ、リック、遅いぞ~!」
「ジョッシュが早過ぎるんだってば!」
次の休み、僕は友達と一緒にハイキングに出掛けた。
山を歩いているうちに、僕は不思議な感覚に襲われた。
「なぁ、ボブ…ここってなんて山なんだい?」
「え?なんだっけ…確か…トゥ…そうだ!トゥローバ山だったはずだけど…」
「トゥローバ山…?」
その名前には記憶があった。
記憶の糸を手繰るうち、それがあの老人と会った山だと思い当たった。
山は整備され、ハイキングコースとなって昔とはまるで違っている。
「すまない、僕、ちょっと先に行くから。」
「お、おい、ジョッシュ!」
僕はその場から駆け出した。
あの場所…老人と出会ったあの洞窟がまだあるかどうか、確かめたかったのだ。
頂上は展望台となっていた。
幸い、近くには誰もいない。
僕は身を乗り出して、壁面を見た。
(あった!)
僕は身をよじり、洞窟に足を踏み入れた。
あの時のことが脳裏によみがえる…
そうだ…あの時、僕はこの洞窟に入り…
「あっ!」
行き止まりの場所に老人がいた。
あの時の老人だ。
体が震え、全身が総毛立つ。
「一千年の時はどうだった?」
「どうか、僕を元に戻して下さい!」
「なぜだ?誰もが羨む不老不死の体を手に入れたというのに、おまえはそれを気に入らないというのか?」
「僕はそんなものはいらない!
長い時を生き、心からそう思いました。
短くとも、人として精一杯生きてそして安らかに死にたいのです。」
老人は微笑み、片手を差し出した。
その掌には、黒い丸薬が乗っていた。
僕は、その丸薬を口の中に放り込んだ。
(あ……)
まるで、砂の城が崩れていくように、足元から僕はちりのようになって消え始めた。
(あぁ……)
僕の頬を熱い涙が濡らしていく…
長い長い僕の人生が、ようやく幕を閉じる。
僕が最後に想ったのは、懐かしい故郷の風景だった…
「ジョッシュ!今度の休み、皆でハイキングに行かないか?」
「ハイキング?そういえば、ここんとこ、どこにも行ってなかったな。
うん、行こう!」
あれから、どれほどの時が流れたのか、もはや僕にはわからない。
とにかくあの頃とはまるで違う時代になった。
悩み、戸惑い…発狂してしまうのではないかと思った時期もあったけど、ようやく僕は落ち着きを取り戻し、最近はけっこう楽しく生きている。
心の中の大きな悩みが消えたわけではないけれど、長い時を過ごす中で、僕もようやく悟ったのかもしれない。
僕は、この時代のごくありきたりな16歳を演じている。
数えきれない程の嘘を吐き、どうにか体裁を繕って…
相変わらず、一所には長くはいられない生活だが、そんな暮らしにももう慣れた。
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「ボブ、リック、遅いぞ~!」
「ジョッシュが早過ぎるんだってば!」
次の休み、僕は友達と一緒にハイキングに出掛けた。
山を歩いているうちに、僕は不思議な感覚に襲われた。
「なぁ、ボブ…ここってなんて山なんだい?」
「え?なんだっけ…確か…トゥ…そうだ!トゥローバ山だったはずだけど…」
「トゥローバ山…?」
その名前には記憶があった。
記憶の糸を手繰るうち、それがあの老人と会った山だと思い当たった。
山は整備され、ハイキングコースとなって昔とはまるで違っている。
「すまない、僕、ちょっと先に行くから。」
「お、おい、ジョッシュ!」
僕はその場から駆け出した。
あの場所…老人と出会ったあの洞窟がまだあるかどうか、確かめたかったのだ。
頂上は展望台となっていた。
幸い、近くには誰もいない。
僕は身を乗り出して、壁面を見た。
(あった!)
僕は身をよじり、洞窟に足を踏み入れた。
あの時のことが脳裏によみがえる…
そうだ…あの時、僕はこの洞窟に入り…
「あっ!」
行き止まりの場所に老人がいた。
あの時の老人だ。
体が震え、全身が総毛立つ。
「一千年の時はどうだった?」
「どうか、僕を元に戻して下さい!」
「なぜだ?誰もが羨む不老不死の体を手に入れたというのに、おまえはそれを気に入らないというのか?」
「僕はそんなものはいらない!
長い時を生き、心からそう思いました。
短くとも、人として精一杯生きてそして安らかに死にたいのです。」
老人は微笑み、片手を差し出した。
その掌には、黒い丸薬が乗っていた。
僕は、その丸薬を口の中に放り込んだ。
(あ……)
まるで、砂の城が崩れていくように、足元から僕はちりのようになって消え始めた。
(あぁ……)
僕の頬を熱い涙が濡らしていく…
長い長い僕の人生が、ようやく幕を閉じる。
僕が最後に想ったのは、懐かしい故郷の風景だった…
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