Gift

092. 面影

２

僕はきっとろくな死に方はしないだろう。
 今まで、多くの女性に恨まれて来たから。



 何も僕はプレイボーイだというわけじゃない。
 数多くの恋愛を楽しみたいと思ってるわけでもない。
 勤め先の銀行でも、僕は真面目で通っている。
 趣味はせいぜい読書と観劇くらいのもので、身なりだってどちらかといえば地味な方だと思う。



ただ、僕には自分でもどうしても押さえられない困った癖がある。
それは、すぐに女性を好きになってしまうことだ。
 女性なら誰でも良いってわけじゃない。
 好きになる女性には、共通点がある。
それは、僕がまだ幼い頃に亡くなった母に似ているということだ。



そのことに気付いたのは、銀行で働き始めた頃だったと思う。
 僕の親しい友人が言ったんだ。



 「エドワードの彼女は、みんな良く似てるね。」



そう言われて、僕は初めて気が付いた。
 僕は、女性に対してただ母の面影を追ってるだけだっていうことに。



 考えてみたら、僕はいつも一目惚ればかりしていた。
それは、女性を見てくれだけで好きになってたということに他ならない。
そして、その見てくれには共通点があった。
 母に似ているということだ。
 情けないことに、僕は大人になってもなお、母を恋しがっていたんだ。



 母に似てる女性と付き合っても、長続きはしない。
それも当然のことだ。
 僕は、ただ母の面影を追い求めていただけなんだから。
 誰も僕に、母親のような愛情を与えてはくれない。
そんなこと、当たり前なのに僕はそのことに失望してしまう。
そして、女性を傷付けてしまう…



考えれば考える程、溜め息しか出て来ない。
アンナは、こんな僕のどこが気に入ったのかはわからないけど、今までの彼女の中でも一番僕に良く尽くしてくれた。
だから、なおさら胸が痛むけど…
でも、愛することは出来ない。



 （どうすれば良いんだろう？
どうすれば、この悪い癖がやめられるんだろう？）