Gift

092. 面影

４

＊



 「エドワード！」

サーシャが手を振りながら、僕の元に走って来る。



 「遅くなってごめんなさい。」

 「そんなに走らなくて良いのに。
 待ってたのはたったの１０分だよ。」

 「１０分だって、遅刻は遅刻よ！」



 彼女は真面目で、何事にもまっすぐで…だけどどこかおっちょこちょいな部分もあって…
気が付けば、彼女と付き合い始めてすでに三年の時が流れていた。
 最近では、彼女との結婚も意識するようになった。
でも、そんな気持ちの裏側で、僕には迷いもあった。



 僕が本当に彼女を愛せるのかという迷いだ。
 今までの恋愛での失敗が、僕を不安にさせるのだろう。



 彼女は、僕の母にはまったく似ていない。
そのことが良い風に動くのか、はたまたその逆なのか…それもまた心配だった。



でも、だからと言って、このままただずるずると付き合いを長引かせるのも男として申し訳ない。
 若い女性にとって、三年の月日は短くはないのだから。



 「サーシャ…僕と結婚してくれないか？」

その日、僕はサーシャにプロポーズした。



 「えっ！？」

 彼女の驚きは、予想以上に大きなもので…
そのことが、僕を不安にさせた。



 「……いやなのかい？」

 「そ、そうじゃないんだけど…」

 彼女は僕から顔を背けた。
 僕達は、お互い同じ気持ちだと思ってたけど、もしかしたらそれは僕の思い込みだったのか？
そう思った時…突然、彼女が泣き出した。



 「どうしたんだ？」

 彼女はただ泣きじゃくるばかりで、何も答えない。
 僕にはなす術がなく、ただ彼女が落ち着くのを待つしかなかった。



 「……ごめんなさい。」

しばらくして、ようやく彼女の涙が止まった。



 「私、あなたに隠してたことがあるの…」

 彼女はそう言って、また涙をこぼした。