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095. 翼
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「今朝も遅いな!」
後ろからかけられた声にトレルが振り向くと、そこには大きな荷物を抱えたオルジェがいた。
「なんだ、それ?」
「知るもんか!
あんたも早く来て手伝えよ!」
それだけ言い残すと、オルジェはトレルを追い越して早足で歩いていった。
(そういえば、バザーの準備がどうとか言ってたな…)
昨夜のイアン神父の言葉を思い出しながらも特に急ぐこともなく、トレルはゆっくりと教会への道を歩いて行く。
いつもと同じ青い空には、鳥達が気持ち良さそうに飛び交っていた。
トレルは、道の脇に腰掛け、その光景に目を留める。
もしも、大きな翼があれば、あんな風に自由に空を飛べるのだろうか…
唐突にそんなことを考え、トレルは、ゆっくりと頭を振った。
(俺には飛べない…)
足に重い鎖を何重にも巻き付けた飛べない鳥…
申し訳程度の自由を与えられてはいるが、決してその場を遠く離れることが出来ないことはわかっている。
逃げ出そうと試み、何度も何度も傷付いて、やがて逃げる意思をなくしてしまった飛べない鳥…
(いや、違う…
俺は諦めたわけじゃなく、ここにいる意味をみつけたんだ…)
年を重ねるうちに、大切なものの存在に気が付いたから。
弟のようなオルジェを守ることが、自分の使命であり生き甲斐でもあるということに気がついたから…
(だから、俺は飛べない鳥のままで良いんだ…)
遠くには飛べなくても、自分には翼を休める場所がある…
それは、きっと何事にも替え難い幸せなのだと、トレルには思えた。
「そろそろ行ってやるか…」
空の鳥達に手を振り、トレルは歩き始めた。
オルジェ達の待つ教会への道を…
「今朝も遅いな!」
後ろからかけられた声にトレルが振り向くと、そこには大きな荷物を抱えたオルジェがいた。
「なんだ、それ?」
「知るもんか!
あんたも早く来て手伝えよ!」
それだけ言い残すと、オルジェはトレルを追い越して早足で歩いていった。
(そういえば、バザーの準備がどうとか言ってたな…)
昨夜のイアン神父の言葉を思い出しながらも特に急ぐこともなく、トレルはゆっくりと教会への道を歩いて行く。
いつもと同じ青い空には、鳥達が気持ち良さそうに飛び交っていた。
トレルは、道の脇に腰掛け、その光景に目を留める。
もしも、大きな翼があれば、あんな風に自由に空を飛べるのだろうか…
唐突にそんなことを考え、トレルは、ゆっくりと頭を振った。
(俺には飛べない…)
足に重い鎖を何重にも巻き付けた飛べない鳥…
申し訳程度の自由を与えられてはいるが、決してその場を遠く離れることが出来ないことはわかっている。
逃げ出そうと試み、何度も何度も傷付いて、やがて逃げる意思をなくしてしまった飛べない鳥…
(いや、違う…
俺は諦めたわけじゃなく、ここにいる意味をみつけたんだ…)
年を重ねるうちに、大切なものの存在に気が付いたから。
弟のようなオルジェを守ることが、自分の使命であり生き甲斐でもあるということに気がついたから…
(だから、俺は飛べない鳥のままで良いんだ…)
遠くには飛べなくても、自分には翼を休める場所がある…
それは、きっと何事にも替え難い幸せなのだと、トレルには思えた。
「そろそろ行ってやるか…」
空の鳥達に手を振り、トレルは歩き始めた。
オルジェ達の待つ教会への道を…
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