三本のたが

５

ルシアンの流した清らかな涙の粒がかえるにふりかかると、その瞬間、かえるは若き王子の姿に変わりました。
背が高く、手足がすらりと伸びた体格に、まるで彫刻のような端正な顔立ちをした美しい王子です。



「ありがとうございました。
あなたの清らかな涙で、僕にかけられていた魔女の呪いが解けたようです。」

王子は、ルシアンの前に優雅に跪き、その手を取って口付けました。



「あ…あの…私は……」

「王子様、私はこの国の末の姫、メリッサと申します。」

姫様はルシアンを押し退けて、とびきりの笑顔で王子に挨拶をしました。
姫様は、一目で美しき王子に心を奪われてしまったのです。
しかし、王子はメリッサを冷たく一瞥しただけで、またルシアンの方に向き直りました。



「どうか、私と結婚して下さい。」

「わ…私がですか？」

「ええ…その通りです。」

「でも、私は…」

「そうですわ。
ルシアン姉様より、私の方がずっと美しく魅力的です。
王子様、私と…」

「私はルシアンさんが好きなのです。
心の美しいルシアンさんが…」

王子は、メリッサには顔も向けず、熱い眼差しでじっとルシアンをみつめました。