上 下
103 / 201
うわさ

しおりを挟む




やがて、また次のライブがやってきた。



 今日もいつもと同じく、さゆみ達は前の方…っていうか、最前列にいる。
 今まではキラさん達が前の方に誘ってくれてたけど、最近ではさゆみがふたりを誘って最前列に潜り込んでるみたい。
さゆみの積極性に、キラさん達もたじたじなんじゃないかな。



 開場してからライブが始まる間がひとりぼっちでちょっと寂しいけど、最前列なんてとても行けないから、我慢するしかない。



 後ろの方は比較的すいてるから、楽といえば楽なんだけど、待ってる間はすることがないのが困る。
こういう時間は過ぎるのがとっても遅く感じるよ。



 (あ!あの人たち!)



 顔は覚えてないからこの前の人と同じ人かどうかはわからないけど…
開演時間の10分くらい前に、酷く場違いな雰囲気の二人連れが入って来るのが見えた。
ごく普通のスーツを着た若い男性と中年男性だ。
とてもこういうバンドが好きだとは思えない…



きっと、レコード会社の人だ…
シュバルツの品定めに来てるんだ。



 (あ、ママ!)



 私は、焦って顔を逸らした。
ママとマネージャーさんが入って来て、スーツ姿の二人連れの傍に立ち止まった。
しおりを挟む

処理中です...