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side かおり

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「なに?そんな程度?俺、そのこと考えたら、身体が溶けてしまいそうなくらい、幸せな気分になるのに…」

 瑠威は疎まし気な視線で私をみつめる。



 「……私だってそうよ。」



 嘘を吐いた。
そう言わないと、瑠威が拗ねると思ったから…



私にはそんな熱はない。
 現実を知ってるから…
むしろ、近付く別れの時をひしひしと感じて、凍てつくような寒さに震えている。



でも、そんなことは言えない。
 今は言っちゃいけない。
うまく別れを切り出すためにも、今はいつもと変わらないふりをしていなければ…



「かおり…俺、絶対にかおりのこと、幸せにするからな…」

 「ありがとう…」

 「かおり、愛してる…」

 私を抱きしめる瑠威の腕に力がこもった。



 「私もよ、瑠威…」

 彼の鼓動を感じながら、私は彼の胸に顔を埋めた。



このまま時が止まれば良いのに…
小娘のようなことを考えてしまった自分を情けなく感じた。



 時を止めることなんて出来ない。
ずっと瑠威と一緒にいることなんて出来ない。



 (そんなことはわかってるのに……)

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