上 下
124 / 201
side 瑠威

しおりを挟む




 (畜生……!)



 俺は固い握りこぶしを、クッションにぶつけた。



 苛々しているのは、誰あろう、俺自身にだ。
 望結に言われて、なにも言い返せなかった。



 「瑠威はママのこともっと考えるべきだよ!」



そんなこと、言われなくたってわかってる。
……俺だって、気にしてないわけじゃない。



だけど、両親に結婚のことを言ったところで、反対されるのがおちだ。
それだけならまだしも、どうせかおりに酷いことを言うに決まってる。
かおりには辛い想いはさせたくない。
だから、会わせたくないんだ。



 俺がバンドをやめないからといって、その後、一切の連絡を絶ったのは親父達の方だ。
あの時に、俺はもう親との縁は切ったつもりだ。
 俺は、俺だけでかおりを絶対幸せにしてみせる。
それの何が悪いんだ!?



そんな想いのどこかで、もやもやとした気持ちがあることは事実だ。



 俺だって、結婚をみんなに祝福してほしい。
でも……
親父は絶対にかおりのことは認めないだろう。
そんなことはわかってる。
 年がどうとか、子供がいることとか、初婚じゃないとか、いろんなことを言って反対するに決まってる。
だったら、最初から言わない方が良いじゃないか。
かおりに悲しい想いをさせないためにも、今まで通り、親とは決別したままの方が誰にとっても良い事なんだ。



メンバーはみんな俺とかおりのことを祝ってくれる。



 (それだけで良いじゃないか…)

しおりを挟む

処理中です...