お題小説2

ルカ(聖夜月ルカ)

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003 : 障害と剣

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リカールとターナーは大きく肩で息をしていた。
 二人共かなり疲れてきているようだ。
しかし、無傷のリカールとは違い、ターナーの鎧に覆われていない部分には幾筋かの傷が刻まれ、赤い血が流れ出ていた。
 手負いの獣は危険だと言われるが、その時、私はターナーの視線になにかただならぬものを感じた。
 何かとんでもないことが起きなければ良いが…
ふと、そんな事を考えたその瞬間、ターナーが突然リカールの足を蹴り上げた。
 会場から大きな声が沸きあがる。
 一瞬バランスを崩したリカールの身体を乱暴に突き倒し、リカールの首もとめがけターナーの大きな剣が振り下ろされる。
 女性の悲鳴があがり、数人がその場に倒れこむ。

リカールは、ターナーの剣が首に触れる直前に素早く体を交わし、ターナーの剣は固い床にぐさりと突き刺さった。
 観客の視線が二人に釘付けになる中、すぐにその場に関係者がかけつけ、暴れ狂うターナーを数人がかりで抑えこみ退場させた。
 退場させられる間にも、ターナーはリカールに向かって口汚く罵りの言葉を浴びせ、そんなターナーに観客の非難の声が浴びせ返される。

ターナーの反則により、今回も当然リカールの勝利になった。
 観客は、リカールに惜しみない拍手を送り、リカールコールが波のように沸き起こる。
リカールは観客に軽く一礼し、控え室に向かってしずしずと歩み始めた。

リカールの姿が見えなくなっても、会場の熱気はまだ静まらなかった。
 先程のおそろしい光景にショックを受けたのか、その場にうずくまり涙を流す者、ターナーの反則に怒りがおさまらない者、放心したように客席に座りこむ者等様々だ。
しばらくして、場内の設備を解体する頃になってようやく観客はその場を離れ始めた。
 私はジャック達と共に解体作業にとりかかり、その後は会場の清掃をすませてやっと家路に着いた。
 会場の外に出ると、空には丸い月がぽっかりと浮かんでいた。
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