お題小説2

ルカ(聖夜月ルカ)

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040 : 嘲りの犠牲

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その後、イングリットに関する内容は日増しに増え、日記に書きこまれる文字数もうんと増えていった。
それまでの淡々とした内容に比べ、そこにはビルの様々な感情が書きこまれるようになっていた。
 心なしかその文字までもが希望や喜びに溢れているようにイングリットには感じられた。



 『本当にイングリットさんは優しい良い人だ。
 俺を他の人間と分け隔てなく接してくれる。
 出来る事なら、彼女がマーチンと結婚していつまでもこの町で暮らしてくれれば良いのに…』



そのページにはマーチンのことも書いてあった。
 子供の頃からビルをかばってくれたことや優秀で誠実なマーチンへの憧れと尊敬…そして感謝の言葉が書き連ねてあった。

さらにその後には、イングリットが、初めてビルの家を訪ねた日のこと…
そのことで、義父がどれほど喜んだかということも書いてあった。

ビルの日記には愚痴や誰かの悪口のようなことは一言も見当たらなかった。
だが、少女暴行事件の時だけは、さすがに気が滅入っているような文章が綴られていた。
そのことからも、心無い誰かが何の証拠もないのにビルを犯人扱いし、酷い事を言ったかしたかしたことだけはイングリットにも容易に推測出来た。



 (それなのに、ビルは相手のことを何も書いてない…
悔しかった筈なのに…どうしてあなたはそんな気持ちを日記にさえ書かないでいられるの!?)

イングリットは、頬を伝う涙をそっと拭う。
さらにページをめくるイングリットの表情が驚きの表情に変わった。



 (そうだったの…)

そこには、義父と言い争いをした日のことが書かれていた。



 『父さんは、イングリットさんにはっきりと自分の気持ちを伝えるべきだと言う。
 大切なのは結果ではないと言った。
でも、そんなこと、出来る筈がない。
 俺が告白なんてしたら、彼女が心を痛めることはわかっている。
 俺を傷付けないために、彼女はどうしたら良いかときっと悩むはずだ。
それだけじゃない。
もし、そんなことをして気味悪がられたら、もう会ってもらえなくなるかもしれない。
 俺は、それが怖いんだ。
 彼女が俺を避けるようになったら…この町からいなくなったら…そんなこと耐えられない。
だから、俺は今のままで良い。
いや、今のままが良いんだ。
マーチンと彼女が結婚して、その幸せな姿をたまに見せてもらえるだけで良い。
 俺の大好きな二人が幸せでいてくれたら、それが俺にとって一番の幸せなんだ。』

その文面に、イングリットの涙は止まらなくなっていた。
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