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070 : 荒れ狂う波
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「さぁ、飲もうぜ。」
リュックはドミニクのグラスになみなみと酒を注いだ。
「カトリーヌとドミニクの再会に乾杯だ!」
私達はグラスを合わせた。
ドミニクの顔にはにかんだような笑みが浮かんだ。
「ところで、パドスにはなんで行ったんだ?」
「家族と別れてから、俺は逃げるように町を離れた。
行き先なんてどこでも良かった。
知らない土地で一人でやり直そうと思ったんだ。
最初に行ったのはどこだったかな。
確か、パドスが最初ではなかったはずだ。」
ドミニクは、遠い昔の日々を思い出すかのように、瞳を泳がせた。
「それからどうしたんだ?」
「少し住んではどうも落ち着かず、また町を変えた。
そんなことをしていたある日、俺は小舟で釣りに出たんだ。
俺は泳ぎには自信があった。
だから、けっこう沖まで出てたんだ。
その日は天候が悪いから海には出るなと言われたけど、俺は聞く耳を持たなかった。
それが大間違いだったんだ。」
ドミニクは、グラスの酒を一気に飲み干した。
「突然、土砂降りの雨が降り出し、強風に船は翻弄された。
いつ、ひっくり返ってもおかしくない。
初めて恐怖を感じたよ。
大きな波が打ち寄せ、ついに小舟は転覆した。
荒れ狂う波にもみくちゃにされながら、俺は必死で泳いだ。
だけど、浮かんでいることさえままならない。
あぁ、俺はこれで死ぬんだと
覚悟した。
意識は朦朧とし、何も考えることは出来なかった。
だが、俺は死ななかったんだ。
再び、目を開いた時、俺はこの町の診療所にいた。」
「良かったな、助かったんだな!」
「あぁ、運良く海岸に打ち上げられていたらしい。
流されているうちに船にでも当たったのか、俺は怪我をしていた。
だから、診療所にしばらく世話になった。
そこで働いてたのが、マーサだった。」
「マーサ?
誰なんだ、そりゃ。」
「……俺の妻だ。」
「えっ!?」
驚いてしまったが、考えてみれば十分に有り得る話だ。
カトリーヌ達と別れて、もう20年程が経っている。
その間に、新たな出会いがあってもおかしくはない。
診療所で世話をしてもらったのが縁でマーサと結ばれ、子供も二人いるという。
「……だから…俺はカトリーヌには会えない。」
「えっ!?どうしてそうなるんだ?
何もカトリーヌは、あんたの家庭を壊そうとしてる訳じゃない。
ただ、結婚の報告をしたいだけなんだ。
会うくらい、なんの問題もないだろう。」
「俺は、カトリーヌに合わせる顔がない。
俺には父親の資格もない。
それに、今の家族にも心配をかけたくない。
だから…カトリーヌには会えない。」
リュックはドミニクのグラスになみなみと酒を注いだ。
「カトリーヌとドミニクの再会に乾杯だ!」
私達はグラスを合わせた。
ドミニクの顔にはにかんだような笑みが浮かんだ。
「ところで、パドスにはなんで行ったんだ?」
「家族と別れてから、俺は逃げるように町を離れた。
行き先なんてどこでも良かった。
知らない土地で一人でやり直そうと思ったんだ。
最初に行ったのはどこだったかな。
確か、パドスが最初ではなかったはずだ。」
ドミニクは、遠い昔の日々を思い出すかのように、瞳を泳がせた。
「それからどうしたんだ?」
「少し住んではどうも落ち着かず、また町を変えた。
そんなことをしていたある日、俺は小舟で釣りに出たんだ。
俺は泳ぎには自信があった。
だから、けっこう沖まで出てたんだ。
その日は天候が悪いから海には出るなと言われたけど、俺は聞く耳を持たなかった。
それが大間違いだったんだ。」
ドミニクは、グラスの酒を一気に飲み干した。
「突然、土砂降りの雨が降り出し、強風に船は翻弄された。
いつ、ひっくり返ってもおかしくない。
初めて恐怖を感じたよ。
大きな波が打ち寄せ、ついに小舟は転覆した。
荒れ狂う波にもみくちゃにされながら、俺は必死で泳いだ。
だけど、浮かんでいることさえままならない。
あぁ、俺はこれで死ぬんだと
覚悟した。
意識は朦朧とし、何も考えることは出来なかった。
だが、俺は死ななかったんだ。
再び、目を開いた時、俺はこの町の診療所にいた。」
「良かったな、助かったんだな!」
「あぁ、運良く海岸に打ち上げられていたらしい。
流されているうちに船にでも当たったのか、俺は怪我をしていた。
だから、診療所にしばらく世話になった。
そこで働いてたのが、マーサだった。」
「マーサ?
誰なんだ、そりゃ。」
「……俺の妻だ。」
「えっ!?」
驚いてしまったが、考えてみれば十分に有り得る話だ。
カトリーヌ達と別れて、もう20年程が経っている。
その間に、新たな出会いがあってもおかしくはない。
診療所で世話をしてもらったのが縁でマーサと結ばれ、子供も二人いるという。
「……だから…俺はカトリーヌには会えない。」
「えっ!?どうしてそうなるんだ?
何もカトリーヌは、あんたの家庭を壊そうとしてる訳じゃない。
ただ、結婚の報告をしたいだけなんだ。
会うくらい、なんの問題もないだろう。」
「俺は、カトリーヌに合わせる顔がない。
俺には父親の資格もない。
それに、今の家族にも心配をかけたくない。
だから…カトリーヌには会えない。」
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